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 GIGAスクール構想を成功させるためのもう1つの条件としては、教師の雑務を劇的に減らすための校務支援システムの導入が必要である。経済協力開発機構(OECD)の2019年調査によると、調査対象の49カ国のうち日本は教師の勤務時間が一番長いとされる。充実した授業にするための準備ではなく、様々な事務処理や他の行政事務などの雑務が原因と分析されている。

 劣悪な勤務環境の中では、デジタル教育のために必要なスキルを身につける時間もなければ、そのための心の余裕もないのが現実ではなかろうか。校務支援システムは都道府県や市町村の教育委員会の予算で導入するものなので、自治体の財政能力によってはシステムを導入できていないところが出てくる。

 デジタル庁創設など行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に伴い、市町村の基幹行政システムの標準化や共同利用システムの構築が話題になっている。だが校務支援システムこそ、国が開発して全国一律で提供すればよいのではないのか。

 日本と同じ教育制度を採択している韓国の場合、こうした問題を解決するために、2000年ごろから政府予算で校務支援システムを開発し、全国の小中高校で共同利用している。その結果、以前に比べて教師の雑務はほとんどなくなり、授業の準備に集中できる環境が整備された。

 さらに平等な教育機会という観点でも考えてみたい。日本の教育基本法第4条には教育の機会均等が明記されている

(教育の機会均等)
第四条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。

 これらの条文に照らし合わせて今の日本の教育体制をみる限り、教育基本法を忠実に守っているとは到底言い難い。都会か地方か、そして過疎地か、学生が住む場所により教育を受ける環境は異なる。父母の経済的事情にもよるため、平等な教育機会が与えられているとは言えない状況ではなかろうか。

 今までは様々な物理的な制限により、教育基本法の理念を実現しにくい状況もあったが、デジタル時代においては、政府のやりよう次第で教育の機会均等を実現できる環境ができつつある。

 この問題についても、韓国での取り組みを少し紹介しよう。韓国の教育基本法も日本のものとほぼ同じ内容を持つ。その教育基本法に記された教育の機会均等を守るために、政府は「国営ネット塾」を設立して、高校や大学の受験のために必要な教育コンテンツを開発している。すべての学生に無償提供され、インターネットにつながりさえすれば誰でも受講できる。しかも大学のセンター試験は、学校教育で教える内容と国営ネット塾で教える内容の範囲から出題することが法律で義務づけられている。

 このような取り込みは、GIGAスクール構想が実現され、すべての学生がタブレットやパソコンを持つようになれば、日本でも可能になる。平等な教育機会の提供という観点から、ぜひとも日本でも実現してほしい。

 GIGAスクール構想により多数のハードウエアが導入されることが予想されるが、それはあくまでも一時的な予算措置である。導入したハードウエア、そしてソフトウエアを最適な環境で維持していくには、毎年それなりの維持保守費用が必要となる。もちろんそれらの財源も考えなければならないはずだが、それは不透明なままである。

 韓国では内国税の20%を教育財政とすることが法律で定められており、その予算を人口割で自治体の教育委員会に分配している。さらに、広域自治体の税収である酒税、ガソリン税、タバコ税から5%を、法律により各市町村の教育委員会に配分している。

 これから日本を背負っていく大切な人材を育てるためには、しっかりと教育に投資しなければならないと思う。その理由は言うまでもないが、世を変えるのは人であり、その人を変えるのは教育以外にないからである