全6377文字
PR
【質問2】小中高で必修化されるプログラミング教育の成否は?
【回答】専門教育する人材が足りない、技術者を教育に動員しても単純暗記式の勉強になる恐れ

 世界の至るところで、プログラミング教育ブームが起きている。ソフトウエアがすべての産業の基盤となる近未来社会において、ソフトウエアを開発できるプログラミングの知識の習得は、選択ではなく必須になりつつある。米国、英国、フィンランドなどの教育先進国と呼ばれる欧米各国は、重要な国策として学生に対するプログラミング教育に力を入れている。

 米国では2013年に、当時のオバマ大統領が「週に1時間プログラミングを勉強しよう」という「Hour of Code」を呼びかけた。英国でも5歳以上のすべての児童生徒にプログラミング科目を必須とした。またフィンランドでは2016年から、小学校から高校までのすべての教科にプログラミング教育を組み合わせるという画期的な教育政策を発表し、実行している。

 韓国では2018年からプログラミング教育が小中高校で正規のカリキュラムに編入された。技術が中心となる未来をリードする人材を育成し、国家競争力を強化するために、子供の頃からプログラミングを身近ものとして経験させている。簡単なコンピューターの利活用だけではなく、プログラミング教育を通じて、論理的思考力と創造的問題解決力を育てることに重点を置いている。

 日本でも小中高校で必修となる。プログラミング的思考を養うための教育の一環として、学習指導要領の改訂に伴い小学校では2020年度から、高等学校では2022年度から必修となるようだ。

 このように世界的な流れとなったプログラミング教育は、コンピューター技術者を養成するためのものではない。ITがすべての分野と融合する時代においては、プログラミングの原理を知っておくことで、ありとあらゆる分野においてプログラミング知識を有効に活用することができる。そして教育の核心は、プログラム言語を利用してソフトウエアを開発することで育まれる、最適なアルゴリズムを見いだす問題解決能力の向上であり、そのための創造力を豊かにすることである。

 素晴らしい教育目的を持って始めた事業ではあるが、現時点では日本におけるプログラミング教育は大きな問題を抱えている。専門的な教育を担当する専門人材が決定的に足りないことである。

 プログラミング教育は創造的でありながら融合的な思考力を育てるためのものなので、単純にコーディング技術を学ぶのとは違う。教育的な観点を持てない技術者を教育に動員したとしても、プログラミング技術だけを身につける単純暗記式の勉強になる恐れがある。

 他国の事例の場合、既存の教師や教育関係者がプログラミング教育を担当するには能力が足りないと判断し、教育的な知見を持つIT専門家がプログラミング教育に取り組んでいる。IT産業の現状を知る専門家は、将来的に実際の産業現場で応用できる適切なレベルの教育を子供たちに提供することもできる。

 さらに様々な最新技術を取り入れて、子どもたちの創造力と想像力をプログラミングによって自由自在に実装できるようにもしている。いわゆる詰め込み教育でなく、プログラムのプロセスを楽しむ自然的な体験を子供たちに与えることができるわけだ。

 プログラミング教育は、従来の数学や理科のような暗記中心の近視眼的教育から脱して、ロジカルに思考できるように誘導する専門的な教育へと進むべきだ。そうすることで、本来の目的である創意的であり想像力も豊かな子供を育てる教育として役に立つと思う。