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【質問3】転職すべきかに迷う技術者に経験者として掛ける言葉は?
【回答】転職は時に劇的な変化を人生にもたらす。「譲れないこと」を優先したほうがいい

 新卒で入った会社が自分に合っている確率って、サイコロを振るみたいなもので、かなり低いはずだ。何しろ自分のことも社会のこともろくに知らないんだから。でも、多くの人は「会社ってこういうものか」と受け入れ、自分をそれに合わせたり、意図的に好きになろうとしたりする。これは別に悪いことではない。どうせ長く働くならば、好きになったほうがいい。

 でも、どうしても合わせられず、好きになれないならば、さっさと辞めたほうがいい。今や仕事人生は45年もある。それだけ長いと、自分から積極的に動かなくても定年後に転職するような状況になるかもしれないし、リストラや出向もあり得る。いつでも飛び出せるように、社外でも評価されるような能力はずっとキープしなければならない。

 転職の話をすると「キャリア観をしっかり持って、それがかなえられる環境に移籍するということですね」と言われることがある。だが、私が言いたいことは少し違う。

 今の私の仕事は、前職でSEだったときの私が思い描いていた将来像、キャリア観とはかけ離れている。今や自分の一番の武器となったファシリテーションなんて、言葉すら聞いたことがなかった。システム構築以外のプロジェクトをリードするなんて、想像もしていなかった。2回目の転職をしようかと悩んだときの将来イメージも、今現在とは全然違う。当時は経営者になるとか、こうして日経BPのサイトで記事を書くなんて思ってもいなかった。

 しばしば、転職は「思い描いていたキャリアが実現できた」ではなく、「そもそも自分では思ってもみなかった自分になる」という劇的な変化を人生にもたらす。だから、キャリアを決め打ちして「絶対これを実現する」なんて力むよりも、自分が大事にしたいこと、譲れないことを優先するくらいのほうが、うまくいくんじゃないだろうか。

 私の場合は2社とも「小さくて怪しい会社が好き。面白そうな仕事、楽しそうな職場が大事」という程度の基準で選んだ。これが私にとっての「譲れないこと」だったからだ。キャリアの決め打ちよりも、それが大事だと思いますよ。