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【質問2】やはり日本は「IT後進国」だと実感したことは?
【回答】 IT以前に時代錯誤な法制度やルール、慣習、固定観念から抜け出せない現実

 「変われる」組織は、テレワークやインターネットマーケティングなどテクノロジーを活用した新たな働き方や稼ぎ方を検討して(あるいはまず体験してみて)、課題と真摯に向き合っている。

 従来のITネットワークインフラやセキュリティー、機器のスペックなどの制約条件、オフィス環境の問題点……。さまざまな課題や問題が浮き彫りになるが、それだけではない。今までの労務管理や規定、組織体制、中間管理職のマネジメントのやり方、情報共有のあり方、管理職や従業員のスキルやマインドなどが、新たなワークスタイルの足かせになっていることに気づく。そして正しく投資をし、正しくアップデートしようとする。

 一方、「変われない」組織はどうか。

「ウチのやり方には合わない」
「コミュニケーションがうまくいかない」
「進捗把握ができない」
「セキュリティーが心配だ」
「当社の労務規定に合わない」

 そんなふうに何かと理由をつけて、今までのルールや慣習を正当化し新しいやり方を否定する。考えてみてほしい。DXとは、トランスフォーメーションとは何なのか。

 トランスフォーメーションとは変革である。変革とは既存の枠組みや考え方をブレークスルーすることも含む。すなわち、今までのルールや慣習を正当化していては、変革などいつまでたっても実現し得ない。それにもかかわらず、今までのルールや慣習をベースに、新しいやり方を否定するのはトランスフォーメーション自体の否定に他ならない。

 ここで経営者や部門長の皆さんに問いたい。「あなたは、これまでのルールや慣習を変える覚悟がありますか。変化に抵抗する古い人たちに毅然と接する覚悟がありますか」

 筆者がかつて関わったレガシー中堅企業、その企業の経営企画部門の人たちは事あるごとに次のような言い訳をしていた。「人事制度の変更だけはタブーなんですよ……」。いやいや、何をおっしゃる、うさぎさん。筆者はこう言い返した。「そんなこと言っているから、いつまでたってもトランスフォーメーションができないのですよ」

 こうして変わらない、変わりたくない高齢管理職が温存され、やる気のある中堅や若手がモチベーションを下げる。

 これまでの日本の産業発展と経済成長は、大量生産の人海戦術を前提としたモデルによってなし遂げられた。あるいは他国の企業のビジネスを模倣し、その改良と改善、および徹底的な合理化とコスト削減により実現した面も大きい。

 そのモデルにおいては、新卒一括採用と終身雇用、および「滅私奉公」を美徳とする上意下達型、統制型モデルが実に合理的に機能した。上に従順、かつ24時間働ける男性正社員だけが重用されマジョリティーになり得るモデルであった。組織文化はもちろん、労働制度や社会保障制度や学校教育までもが、そのモデルに最適化されていた。

 しかし今の時代においては、それらが「バグ」を生じさせつつある。グローバル化、少子高齢化、新型コロナウイルス禍、大型化する災害などによって、不確実性が増す時代である。過去に答えを見いだしにくい時代であり、組織の中にも答えを見いだしにくい時代だ。今までのルールや慣習、固定観念、ヒエラルキー構造による不都合は正していかないとイノベーションはおろか、事業継続すら危うくなる。早晩、優秀な人材ほど「変われない組織」に見切りをつけるだろう。もはやIT以前の問題である。

 古い人材、変われない人材ほど、今までのやり方を正当化し変化に抵抗する。変わりたくない(かつバブル時代の感覚が抜けきらない)50代、60代の高齢男性社員、およびその取り巻きだけに心地良い環境は、組織のトランスフォーメーションを阻害する。

「DXせよ! ただし、今までのルール前提で」
「変革だ! 除く私自身」

 そんな世迷言を許してはならない。