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【質問3】デジタル時代に技術者の地位は上がるか、または上げるにはどうする?
【回答】地位が上がるかは技術者次第、学びや挑戦を忘れたら無用の存在に

 ここで言う地位は社会的な地位のことであるから、必ず役割期待が伴う。地位が低いと感じられるなら、役割期待に応えていないからと考えるべきだ。帰属的地位は個人の努力ではいかんともし難いが、近代社会での地位は業績的地位によって評価を受ける。つまり個人の努力次第で地位は上げることができる。

 したがって、技術者の地位が上がるかどうかは技術者にかかっている。技術者は常に学び続けなければならない。新しい技術にも貪欲でなければならない。R&Dで仮説検証を続けなければならない。エンジニアリング力を発揮できなければならない。地位が低いと嘆く技術者はそのような努力を続けているだろうか。

 新しい技術を学ぼうともせず、エンジニアリングも提供できず、現場にも行かない。事業や経営がICT必須になっているデジタル時代を迎えているにもかかわらず、事業会社の技術者も情報サービス会社の技術者も地位を上げる努力をしていない。現場を見ずして事業がわかるか。事業を理解せずして経営がわかるのか。技術者の視線は経営半分、テクノロジー半分でなければ役割を果たせない。

 テクノロジーで言えば、AI(人工知能)だIoT(インターネット・オブ・シングズ)だとはやり言葉に翻弄されるのではなく本質を捉えてほしい。コンピューターシステムはハードウエアとソフトウエアと通信によって成り立っている。そこにはロジックやアルゴリズムや様々な規格がある。コンピューターサイエンスに精通していることがIT 技術者の基本だろう。

 最近大手のSI会社の技術者やCIO(最高情報責任者)やシステム部門のリーダーたちに同じ質問をしてみた。「CSPを知っていますか」

 誰一人として知っている人はいなかった。「クラウド・ソリューション・パートナー」のことではない。40年前に英国ケンブリッジ大学のアントニー・ホーワ教授によって考案された画期的なプロセス代数理論の手法で、並列リアルタイム処理に向く。

 これから5G時代を迎え、ロボティックスや自動化やエッジコンピューティングが技術課題になっていくのは明らかである。来るべき時に大いにその特性を発揮しそうな手法であるが、学んでいる日本人は数えるほどである。CSPはJavaやPythonにもライブラリーが展開され、技術者が取り組みやすくなっているにもかかわらず、この体たらくである。

 特にICTの分野では、学ぶことやチャレンジすることを忘れた技術者は役割を果たせなくなる。だから地位が低くなる。簡単な理屈だ。逆に言えば、地位を高めることは決して難しいことではない。