米IBMが今のPCの原型とも言えるPCを発表してから遅れること3年、1984年にマサチューセッツ工科大学(MIT)の学生によりテレビ会議システムの開発会社、米ピクチャーテルが創立される。発売された製品は当初それほど売れることもなかったが、米国では1990年代前半にテレビ会議の普及期を迎えた。
1990年代前半と言えば、日本企業ではテレビ会議システムをほとんど見ることがなかったが、米国企業にはかなり導入されていた。当初の目的は出張経費を減らすことにあったのだが、会社中心のライフスタイルではすぐに離婚となるお国柄である。従業員にもテレビ会議はすぐに受け入れられた。
一方、日本では質問1の回答にも示した通り、当時は「仕事だ」と言えばすべての免罪符になるような時代であった。テレビ会議システム自体が高額だったこともあり、日本での普及は遅れていた。
しかし今やSkypeなどが普及し、テレビ会議専用の機器は不要になりネットワーク面での制約もなくなった。ここまでテレビ会議の環境が整ったのだから、よほど相手とどうしても会わなくてはいけないということがない限り出張の必要はないはずだ。特に社内の会議なら大半はテレビ会議で済むのではないか。
5G(第5世代移動通信システム)が普及すれば、今あるテレビ会議システムのさらなる高度利用も可能になるだろう。大事なのは5Gという最新技術の利用により新たな仕事の在り方を考えることだ。それが真の働き方改革につながる。
大学の私の研究室にも専用のテレビ会議システムを10年以上前に入れた(後にPCで代替できるため撤去している)。当時は機器ごとにグローバルIPアドレスを取得しないといけないなど大きな障壁があったため、学内でも研究室に導入しているのは私の研究室以外にはなかった。導入効果はてきめんで、海外を含め出張は大きく減った。
今、日本ではテレビ会議をどれぐらい有効活用しているのであろうか。若い世代は歩きながらでも電車の中であっても、気にせずに相手と動画でやり取りできるスマートフォンアプリを使っている(もちろん迷惑で危険だが)。あとは中年以上の世代、管理職らが普通に利用するようになるかどうかである。
今やスマホで簡単に使えるテレビ会議アプリなどにより業務を改善し、その成果を現場に還元することが本来の働き方改革である。だからテレビ会議などITの活用の陰でこっそりサービス残業、早朝出勤などということが起きないように、併せて業務改革も断行する必要がある。
大流行中のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、このままでは無秩序な適用により、日本企業の「お家芸」ともいえる部分最適化が深刻になるだろう。将来には拡張性や他部門への展開などで大きな問題になることが考えられる。
ちまたでは部分最適化を引き起こすRPAは「野良RPA」といわれていると聞く。現場サイドから発想すると、野良RPAであっても業務改善につながるし、様々な業務処理の自動化に使えるだろう。しかし企業組織全体として考えると、統一性やデータポータビリティーを考慮して全社のシステム構築計画の中で検討すべきである。
野良RPAでは担当者が変わったら、使えないということも起きるのではないか。今のブームの成果を将来のゾンビとしてはいけない。