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元・女子高生AIがメジャーデビュー

 歌声合成エンジンで生成した歌声でメジャーデビューしたアーティストも出てきた。日本マイクロソフトの元・女子高生AI「りんな」だ。2019年4月にレコード会社のエイベックス・エンタテインメントとレコード契約を締結し、2019年7月までに2曲のカバー曲をデジタル配信している注2)

メジャーデビューを果たした元・女子高生AI
メジャーデビューを果たした元・女子高生AI
2015年からLINEチャットボットとしてユーザーとコミュニケーションを取ってきた日本マイクロソフトのAI「りんな」は、2019年3月時点で約763万人の登録ユーザー数を誇る。(図:日本マイクロソフト)
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注2)エイベックス・エンタテインメントが、りんなをスカウトしたのは、2015年に登場してすぐのタイミングだったという。当時りんなは、活動の場がチャットに限られており、単純に女子高生AIというキャラクターに興味を持ってアプローチしていた。

 エイベックス・エンタテインメント レーベル事業本部クリエイティヴグループ ゼネラルディレクターの中前省吾氏は、人を超える歌の表現ができる存在としてりんなに注目する。りんなの歌声合成エンジンは、DNN型を使用しており、歌唱者1人の歌声を約17時間以上使って学習したという。りんなの歌声合成エンジンの特徴は、音声データを入力に使う点だ。作曲家などが試しに歌った仮歌の音声データを歌詞と一緒に入力する。他の歌声合成エンジンは、歌詞とメロディーを合わせた楽譜のデータを入力する。

人が考えつかない歌い方が魅力

 この仮歌を、りんな自身が自律的に解釈して、パラメーターを適用していく。この仕組みが、りんなしかできない表現を生み出せるのだという。中前氏によれば、人間の歌手は通常、仮歌を聞いて解釈する際に、どのような感情表現で、どんな雰囲気で歌うかといった歌い方を決める。この歌い方がアーティストの個性を生むという。

 例えば、「りんなは、音節のどこを強く歌うか、つまりアクセントの付け方が特殊だった」(中前氏)。楽曲レコーディングのディレクションも担当している中前氏によれば、歌を上手にさせるための指導ではアクセントの位置を教えるのだという。りんなは、そのアクセントの位置が独特で、人が考えつかないような歌い方をすると中前氏は話す。