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日本の1カ月を1週間でこなす

 コンペ獲得後のスケジュールは過酷だった〔図3〕。設計は大きく4段階。

〔図3〕半年間で4段階の設計を進める
〔図3〕半年間で4段階の設計を進める
(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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19年4月末に撮影した建設現場。敷地南東側から見る。手前に整備予定の広場は一般の人も入れるようにする(写真:ICU)
19年4月末に撮影した建設現場。敷地南東側から見る。手前に整備予定の広場は一般の人も入れるようにする(写真:ICU)
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ICUで小米のシャン副総裁や、北京市の担当者が会議をする様子。長田代表は「アジアは距離が近く、移動も国内と変わらない」と話す (写真:日経アーキテクチュア)
ICUで小米のシャン副総裁や、北京市の担当者が会議をする様子。長田代表は「アジアは距離が近く、移動も国内と変わらない」と話す (写真:日経アーキテクチュア)
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 初めに「概念設計」、日本でいう基本構想を提出する。次に、「方案設計」で、概略図の確認申請を出す。そして基本設計に当たる「初歩設計」と並行して、ローカルアーキテクトの中南設計院が「施工図設計」を進める流れだ。日本で1カ月かかる作業を1週間で進めるスピードだった。

 ローカルアーキテクトの中南設計院は約2000人が所属し、小米武漢本社の業務だけで50人近くを専任とするような大規模設計事務所だ。かたやICUは総勢4人。短期間で事業が終わることを考慮すると、安易に増員するわけにもいかない。何をローカルに任せるか、業務の仕分けは慎重に行った。

 例えば、立面図や断面図、矩計図はローカルに任せる。ICUが床と壁の納まりなどのディテールを描けば、ローカルがそれを施工図に反映する。内装も天井はむき出しだが、床から高さ2700mmまではきっちりデザインした。国内とは違う「割り切り」と「メリハリ」を心掛けた。

 真摯な仕事ぶりで信頼を得た長田代表は、小米が北京市内で進める計画の全体プロデュースなども担当することになった。約13万m2の敷地に、無人工場のほかギャラリーやオフィスなどを建設する。マスターアーキテクトには、プレイスメディア(東京都小平市)が参加する予定だ。

海外の利益が国内での余裕に

 海外では事業がとん挫することも少なくない。長田代表もかつて海外で設計料を回収できずに中止となった経験が幾度もあった。

 そのため、小米武漢本社のプロジェクトでは、設計料を4回分割で受け取る契約とした。「死にもの狂いとなって短期集中で働く分、支払いも早いから面白い。ボーナスも出せる」と長田代表は笑顔を見せた。

 「国内は中小規模の案件が多く、設計料は安い。現場監理費がほとんど出ないこともある。海外で利益を得て経営が安定すると、国内案件も積極的に取りに行けて、クリエイティビティーも発揮できる」と話す。