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 カーボンニュートラル(以下、CN)の実現に向けて、電気自動車(BEV)に大きな期待が集まる。米Tesla(テスラ)のBEV販売台数は2021年、前年比約1.9倍の94万台と急増した(図1)。この勢いがテスラ以外にも波及するのか。鍵を握るのが液系リチウムイオン電池(LIB)だが、いまだに課題が山積みである。

 BEVの課題の大半がLIBに由来すると言ってよい。世界中の自動車メーカーがLIBの課題を解決する計画を打ち出す。本コラムとしては番外編かもしれないが、LIBの行方は電動車(エンジン搭載車)の将来に大きく関わる。今回はLIBの特徴と課題を整理しながら自動車各社の電池戦略を読み解き、35年ごろの電動車市場を予想する。なお次回はポスト液系LIBの開発動向を解説する予定だ。

図1 米Tesla(テスラ)の電気自動車(BEV)販売は急増
図1 米Tesla(テスラ)の電気自動車(BEV)販売は急増
(出所:Tesla)
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液系LIB、NMC系とNCA系が主流

 2次電池は正極、負極、電解質、セパレーターで構成される。LIBでは正極の活物質としてリチウム(Li)の金属酸化物、負極の活物質として黒鉛(C)やシリコン(Si)を使用する。電解質は一般にLi塩の有機溶媒を用い、自動車の場合は液状が主流となり両極とセパレーター膜を浸す。

 LIBは自動車以外にもスマートフォンやパソコンにも広く採用されている。これらは自動車に比べると「超小型」であるため、電解液が漏れにくいようにほとんどゲル状だという。

 LIBは、正極の金属の違いによって大きく5種類に分けられる。総合的に最も性能が高く多く使われているのが、3元系LIBである。ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)の3種類の金属を用いるため、NMC系とも呼ぶ。電圧が高く、質量エネルギー密度が大きい。充放電のサイクル寿命も比較的長い。ただしLiを含めて全てレアメタルであり、近年は高価なCoを少なくしてNiを増やす開発が盛んになっている。

 一方、テスラが採用しているパナソニック製のNCA系LIBがある。正極材としてレアメタルのNiとCo、そしてアルミニウム(Al)を使ったものだ。発熱量が低いことなどNMC系LIBと似た特性となるが、NCA系はNMC系に比べて質量エネルギー密度が高い。パナソニック製では約1.3倍となる。デメリットは、湿気に弱くオーバーヒートの可能性があることだ。

 3元系と並んでよく使われるのが正極にリン酸鉄リチウム(LiFePO4)を用いたLIBで、LFPと呼ばれる。サイクル寿命が3元系LIBと同等で、かつカレンダー寿命が長くて放置しても劣化しにくい。NiやCoを使わないため安価である。ただし電圧が3元系LIBに比べると1割強ほど低く、質量エネルギー密度は6~7割にとどまる。

 このほか、正極にコバルト酸リチウム(LiCoO2)を採用したLIBがあるが、高価で自動車向けには採用されない。またマンガン酸リチウム(LiMn2O4)のLIBもあり、安価で電圧は高いが、Mnが溶けやすくサイクル寿命が1ケタ程度低い。