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 英Jaguar Land Rover(ジャガーランドローバー、JLR)が、直列6気筒エンジン「PT306」を同社のエンジン群「INGENIUM(インジニウム)」に追加した。従来はV型6気筒であり、独Daimler(ダイムラー)に続く路線転換といえる。高級FR(前部エンジン・後輪駆動)車を中心に直6復活の波が到来する中、JLRの直6搭載のプレミアムSUV(多目的スポーツ車)「レンジローバースポーツ」を分析することで、その行く末を考えてみたい。

JLRの直列6気筒ガソリンエンジン
JLRの直列6気筒ガソリンエンジン
(出所:Jaguar Land Rover)
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なぜ今さら直6に

 20年以上前、高級車の排気量2.5Lから3.5L級エンジンは、世界的に直6が普通だった。それがFF(前部エンジン・前輪駆動)化の流れの中でV6が主流になる。JLRがいま再び直6に変更するのは、低コスト化の要求が強まっていることが大きい。

 パワートレーンの電動化が進む中、電動部品にコストがかかるためにエンジン自体はなるべくモジュール化し、シンプルにして低コスト化したいという考えは、JLRに限らず、世界中で強くなっている。するとターボチャージャーを含む吸排気系や動弁系、クランク系が2系統必要なV6は、複雑で高価に映るわけだ。JLRはインジニウムエンジン群の直6において、ガソリンとディーゼルで多くの部品を共通化した。

 もちろん直6化にはユーザーメリットもある。1つがV6に比べて部品を減らせるために軽量化できることである。JLRのPT306の場合、エンジン単体で約20㎏軽くできたという。当然、出力密度も高くなる。

 もう1つは、直6は低振動で静粛性が高い利点があることである。クランクシャフトにかかるピストンからの爆発力が6気筒だと120度ごとの等間隔となり、力学的なバランスが理想的だ。原理的に1次、2次、偶力の各振動を打ち消せるクランクピン配置と爆発気筒順序(例えば1→5→3→6→2→4)にできる。V6の場合、力学的釣り合いを重視して不等間隔爆発にすることがある。またV6の配置では、偶力は消せない。

†偶力=クランクシャフトを中心に、クランクピンが等距離で、方向が180度反対向きの同じ大きさの2つの力。

 一方で欠点は、エンジンの全長が長くなることだ。エンジンルームで縦置きすることになり、FF車には不向きである。またクランクシャフトも長くなるため、設計が結構難しい。長いほどねじり剛性が小さくなり、太くする必要がある。