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 世界の自動車メーカー各社が2020年、一般消費者に「二酸化炭素(CO2)ニュートラル」と勘違いされている電気自動車(BEV)を矢継ぎ早に市場投入する。

 ドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen、VW)は、本音は違うと思うが、対外的には「本気」でBEVに舵(かじ)を切ると主張する。19年末に、「ゴルフ」に似た小型車「ID.3」の量産を開始した。

 驚いたことに、ID.3の生産では、部品から車両の組み立てまですべての電力を再生可能エネルギーを使うという(図1)。すごいことだ。ただし使用時に車両に充電する電力は、欧州の発電構成を考えると「CO2ニュートラル」にはまだ遠い。残念である。

図1 「二酸化炭素ニュートラル」な電気自動車の組立工場
図1 「二酸化炭素ニュートラル」な電気自動車の組立工場
ドイツ・ザクセン州にあるツヴィッカウ工場。(出所:VW)
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 ID.3の基本モデルのBEV航続距離は、330km(WLTCモード)にとどまる。しかも急速充電でも満充電に30分はかかるそうだ。使い勝手はイマイチ。VWは、28年までにBEVを累計で2200万台販売したいという目標をぶち上げているが、消費者が実際に買うのかどうかは別の話である。

 VWグループのドイツ・アウディ(Audi)は、電動SUV(多目的スポーツ車)「e-tron」シリーズを拡充する。20年春に高性能車「スポーツバック」、同年末には電動四輪駆動の「GT」を立て続けに投入する。

 基本モデルで7万ユーロ(1ユーロ=116円換算で約810万円)超と高価な車両にもかかわらず、航続距離は約400km超にとどまる。電圧を800Vに高めて充電時間の短縮を図るが、それでも充電量が8割に達するのに20分かかる。米テスラ(Tesla)のBEV「モデル3」を意識したのだろうが、この仕様でドイツのアウトバーンを快適に走れるのか心配になる。

 ドイツBMWは、13年に小型BEV「i3」を発表して注目を集めた(図2)。ただレンジエクステンダー(航続距離延長装置、以下RE)がない車両の航続距離はわずか390km。RE搭載車で511kmである。REは列型2気筒ガソリエンジンで、燃料タンクは9Lと少ない。燃費は13.4km/Lと悪い。本気で販売するつもりはなかったのだろう。

図2 2気筒エンジンをレンジエクステンダーとして使う
図2 2気筒エンジンをレンジエクステンダーとして使う
BMW「i3」。2013年に発売した。写真は2017年に一部改良した車両。(出所:BMW)
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 BMWは、20年3月に小型BEVの「ミニクーパーSE」を発売した。最高速度は150km/hにとどまり、航続距離はたったの230kmである。購入者は限られそうだ。

 BEVの開発にやる気を感じなかったBMWだが、20年内に発売するSUV「iX3」は、ようやく本気度が伝わってくる車両である。専用ラインを設けたi3と異なり、量産エンジン車の「X3」と同じ生産ラインで造る。“量産車”らしく、コストを意識した様子が伺える。航続距離は440km超に達するようだ。ただ急速充電には30分かかるらしい。

 このほか、米テスラをはじめ欧州勢のスウェーデン・ボルボ(Volvo)やドイツ・ポルシェ(Porsche)、英ロータス(Lotus)、英アストンマーチン(Aston Martin)など、日本からはホンダとトヨタ自動車が20年にBEVを投入するという。