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 電気自動車(BEV)のレンジエクステンダー(航続距離延長装置、以下RE)として、発電用内燃機関の多くの方式が提案されている。後編では、最近注目を集める対向ピストンエンジンやロータリーエンジンなどの実力を考える。

前編はこちら

対向ピストンエンジン

 ボクサーエンジンと同様に静粛性に優れるREとして最近注目を集めるのが、対向ピストンエンジンである。前述のボクサーエンジンとはピストンの向きを正反対に配置したもので、左右にそれぞれクランクシャフトを搭載する。第2次世界大戦中にドイツのユンカース爆撃機に搭載されたことで知られるエンジンだ。

 2本のクランクシャフトが連動し、1つの気筒の中で対向する2つのピストン同士で同時に圧縮する(図6)。シリンダーヘッドはなく、2つのピストンと気筒で燃焼室を構成する。

図6 対向ピストンエンジン
図6 対向ピストンエンジン
2つのピストンを向かい合わせて、中央で燃焼させる。(作成:日経クロステック)
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 ボクサーエンジンと異なるのが、2つのピストンと気筒を完全に同一軸線上に配置できるために、振動をかなり抑えて静かにできることだ。加えて、シリンダーヘッドがないためにボクサーエンジンより左右を短くできる利点もある。水平に搭載する必要はなくて、縦置きしてもいい。動力は片方のクランクシャフトから取り出す。

 吸排気方式は、4ストロークか2ストロークかによって異なる。4ストロークの場合、長い気筒の中間(圧縮される燃焼室)の横に突き出すように吸排気弁と点火プラグを設置する必要がある。2ストロークの場合は左右の気筒に吸気ポートと排気ポートの穴をそれぞれ設けて、ピストンに開閉行程を兼ねさせる。

 課題は多い。4ストロークでは、横に設けた吸排気弁と点火プラグの空間が燃焼室の一部を構成する。熱効率を上げるために圧縮比を高めるにはそこを扁平(へんぺい)形状の副室とするが、すると気筒側の主燃焼室へ火炎伝播(でんぱ)する際の冷却損失が大きくなってしまう。冷却損失と高圧縮比化がトレードオフとなるわけだ。加えて、流量係数を上げにくい。

 2ストロークでは、そもそも排出ガスの問題が非常に大きくなる。また、熱効率の良い条件で定常運転できるとしても、信頼性が心配だ。

 対向ピストンエンジンは、2つのクランクシャフトを連動させるために機械損失が大きいとされる。シリンダーヘッドがないためにメンテナンス性は悪いだろう。わざわざREに採用する必要はない。