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 トヨタ自動車が、かつて否定的だった水素エンジンの開発に力を注ぐ方針に転換した。同じ「水素燃料車」としてトヨタが「究極のエコカー」と位置付ける燃料電池車(FCEV)との競合を気にするよりも、水素社会の実現を優先する。世界がカーボンニュートラルに向けて動く中、電気自動車(BEV)一辺倒になりつつある状況に危機感を募らせる。

水素エンジン車はカーボンニュートラルにどれほど貢献するか
水素エンジン車はカーボンニュートラルにどれほど貢献するか
トヨタ自動車は「富士24時間レース」に参戦し、開発を本格化(撮影:日経クロステック)
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 トヨタは数年前からひそかに水素エンジンを開発していたようだ。FCEVの普及が十分に進まない状況において、相対的に安価な水素エンジン車を投入することで「水素燃料車」の普及拡大を狙う。水素エンジンはFCEVと同様に二酸化炭素(CO2)を基本的に排出しない。窒素酸化物(NOx)が排出されるが、後述のように燃焼の工夫により問題ない水準に減らせる。

 筆者はかねて、水素社会を実現する上でFCEVと水素エンジン車は競合するものではなく、共存共栄するものだと主張してきた。それぞれ得意分野が異なるからだ。今回のトヨタの決断は、大いに歓迎したい。

 FCEVは、中低負荷での効率は水素エンジン車よりも高いが、耐久面を考慮すると負荷変動に強くない。一方、水素エンジン車は、従来の内燃機関車を活用できるために中高負荷の効率がそれなりに高く、燃焼が高速で応答性が高い。適材適所に使い分けられると考える。