2021年4月、ホンダの三部敏宏氏が社長就任会見で、40年に電気自動車(BEV)と燃料電池車(FCEV)の販売比率を世界で100%にすると宣言した。まず、「Tank to Wheel:T2W(燃料タンクから車輪まで)」での「カーボンゼロ」達成を目指す。
同日、ホンダは小型SUV(多目的スポーツ車)の新型ハイブリッド(HEV)仕様とガソリン車仕様の「ヴェゼル」を発売した。2つの発表は一見すると矛盾しており、また偶然に思えるが、筆者はホンダの新しいパワートレーン戦略の始まりを象徴していると感じている。
新型ヴェゼルHEV仕様の技術コンセプトを読み解きながら、ホンダのカーボンニュートラル(CN)に向けたパワートレーン戦略を独断と偏見で推測してみたい。
ようやく収れんするホンダハイブリッド
ヴェゼルのHEV技術「e:HEV」は、20年発売の小型車「フィット」のe:HEVと基本的に同じで、一回り大きなヴェゼルに最適化したものである。
フィットと比べてみていこう。リチウムイオン電池については、48セルから60セルに増やしている。容量については公表していないが、2~3kWh程度だろう。
ヴェゼルに搭載するLEC型エンジンは、排気量1.5Lの直列4気筒。ポート噴射の「i-VTEC」エンジンでありフィットのLEB型と基本的に同じ構成だが、最高出力を72kWから78kWに高めている。新しい機能を採用したわけではなく、スロットル開度の調整といった適合の範囲で実現した。型式をLEBからLECに“格上げ”しているのは、シリアルナンバーが上限に達したため。
PCU(パワー・コントロール・ユニット)は、荷室の後部からエンジンルームに移し、荷室の拡大を実現している。また、2モーターシステムの出力を80kWから96kWに高めた。これは電池容量の増加とともにシステム電圧を高めて実現している。
フィットを基にしつつ、正常進化させたヴェゼルのe:HEV。ホンダのHEV技術はこれまで迷走してきた印象だが、いよいよ収れんした格好である。