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セキュリティー規格WPA3対応はあまり進んでいない

 無線LANのセキュリティーに関しては、「WPA2(Wi-Fi Protected Access 2)」という暗号化方式が長く使われていた。しかしWPA2は2017年に「KRACKs」(Key Reinstallation AttaCKs)と呼ばれる致命的な脆弱性が発見された。その対策として、14年ぶりに「WPA3」という暗号化方式が新たに発表されている。

 WPA3を使うにはWi-Fiルーターはもちろん、PCやスマホなど子機側の対応も必須となる。しかし現時点では、WPA3対応製品はほとんどない。国内では法人向け無線LANルーターで対応ファームウエアが提供されている程度だ。

法人向けモデルでは既にWPA3対応製品が登場している。写真はバッファローの「WAPM-2133TR」。実勢価格は税別8万2970円
法人向けモデルでは既にWPA3対応製品が登場している。写真はバッファローの「WAPM-2133TR」。実勢価格は税別8万2970円
(出所:バッファロー)
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従来規格と互換性のない802.11adと802.11ah

 IEEE 802.11adとIEEE 802.11ahという規格もある。いずれも802.11から802.11axに至る系譜には入らない規格で、これらの規格との互換性がない。

 IEEE 802.11adは、WiGig(Wireless Gigabit)とも呼ばれる。60GHz帯という高い周波数帯を利用し、最大6.7Gビット/秒の高速通信ができる。ただし壁や人体といった物理的な障害物で電波が減衰しやすいため、長距離通信に向いていない。電波の到達範囲は10m程度とかなり狭く、IEEE 802.11axやIEEE 802.11acと同様の使い方をするのは難しい。対応製品も少なく、ハイエンドのWi-FiルーターやPCのごく一部の機種にとどまる。

 IEEE 802.11ahは、「Wi-Fi HaLow」とも呼ばれているIoT機器向けの規格である。少ない消費電力で広いエリアをカバーする無線通信技術LPWA(Low Power Wide Area)に分類されることもある。国内では920MHz帯を使う予定だ。通信速度は他の無線LAN規格よりかなり低い一方で、伝送距離は最大1km程度と長い。街頭の宣伝モニターや監視カメラなどでの活用が見込まれる。

 ただしIEEE 802.11ahは、国内ではまだ使用できない。使用するには電波法の省令改正が必要になる。

田代 祥吾(たしろ しょうご)
PC周辺機器メーカーから日経WinPC編集部を経て、現在はフリーランスライターとして活動。日経PC21や日経パソコンなどで記事を執筆している。得意ジャンルはパソコンやスマートフォン、自動車、アキバ系サブカルチャーなど。