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 自動車の外界センシングに有効なLiDAR(Light Detection and Ranging)の進化が著しい(関連記事1「メカレスLiDARが第2世代へ、完全自動運転車の礎に」)。レーダーやカメラなど他の車載センサーとの厳しい競争環境で採用を拡大するため、特にLiDAR専業メーカーが、低価格化しやすいメカレス型を前提に、特徴ある新技術を開発中である。新技術の1つは波長の工夫だ。

目に安全なμm光を高出力化

 LiDARの波長は、既存品の多くは905nmなど900nm前後を使う。これに対して第2世代メカレス型は、1550nm(1.55μm)や10μmに長波長化する。長波長光には、主には2つの利点がある。

 1つは太陽光の影響を受けにくいこと。太陽光の地表でのエネルギー密度のピークは500nm付近であり、900nm前後から波長が長ければエネルギー密度は低くなる(図1)。昼間にレーザー光にとっての雑音となる太陽光が減るため、受光部のSN比(信号対雑音比)を高めやすい。

図1 太陽光のスペクトラム
図1 太陽光のスペクトラム
波長(横軸)が長いほど太陽光のエネルギー(縦軸)が少ない。目への影響も少なくなる。(図:日経エレクトロニクス)
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 もう1つは出力強度を高めやすいこと。レーザー光に対しては、人の目に対する安全性から、900nm前後の波長でIEC(国際電気標準会議)が出力に上限を定めている。光線が目の水晶体を通して網膜に吸収されると、網膜が損傷する恐れがある。1400nm以上の波長のレーザー光なら網膜に吸収されず、IECの規制対象外となる。原理的には、強い光線を出して受光部でのSN比を稼げる。