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 以前、マイケル・オズボーンという英オックスフォード大学の教授が、日本人の仕事の約49%はこれからテクノロジーが進化して代替されるという発表をしました。日本でもよく取り上げられたテーマだったと思います。この議論はまさしく「人による労働かテクノロジー」、つまり「or」の関係です。

 これもアメリカの教授が言われていましたが、今の世の中で労働には3つの種類があります。肉体労働、頭脳労働、そして感情労働です。

 肉体労働、頭脳労働は大変分かりやすいですが、この感情労働というのは自分の感情をコントロールして模範的にカウンターパートと接することです。常に模範的であることでお客さまに接客をする。先生や医者なんかもそうだといわれています。

 これからの時代で労働に対して何が起こるかというと、肉体労働はロボットに、頭脳労働はAIに恐らく置き換わっていく。そうすると、絶対に置き換えられないのが恐らく感情労働だと思います。

 これから感情労働というものは、まさに人間が働くことにすごく意味があるものになっていきます。ただ、感情労働というのは非常にストレスがかかります。自分の感情をコントロールしなくてはいけませんから。

人「with」テクノロジー

 私は1人でお店を回ると、社員たちに「何か今、ストレスを感じている?」とよく聞きます。みんなストレスはあるんです。ただし、お客さまとの接客にストレスを感じている人はほとんどいません。なぜなら、この仕事が好きで入ってきているからです。ではどこにストレスを感じているのかというと「本部から資料を出せと言われている」「棚卸しをいついつまでにやらなくてはいけない」などの意見が多く集まります。

 だからこそ我々がしなくてはいけないのは、この部分をAIに、単純作業で価値を生み出さない部分をロボットに置き換えることで、「人 or テクノロジー」ではなく「人 with テクノロジー」にしていくということです。

 要はテクノロジーを活用することで人が価値を生み出している部分をより生み出しやすくする。現場力をより発揮しやすくするというのが、我々の産業がテクノロジーと向き合っていくということなのではないかと思います。

 こういう話を従業員にすると「我々は楽になりますけど、それってお客さまにとってどうなんですか」という意見が出ます。素晴らしいことです。そこで次のスライドを作りました。

顧客満足度の2層構造
顧客満足度の2層構造
(出所:ロイヤルホールディングス)
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 お客さまの満足度は基礎的な満足度と付加的な満足度に分かれます。基礎的な満足度というのは当たり前の話で、清潔な食器や適切な提供時間のことです。そして付加的な満足度というのは、スマイルや、臨機応変に対応してくれる、心がこもっている接客ということだと思います。

 ただ、これからの人手不足では基礎的な満足度を維持できなくなっていきます。基礎的な満足度が維持できていないのに付加的な満足度だけでお客さまは喜んでくれるかというと、それは絶対あり得ません。

 ということは、恐らく我々がやらなくてはいけないのは、基礎的な満足度の部分をいかにテクノロジーで代替して、人は付加的な満足度にいかに集中するのかということです。それがまさしく先ほどの「人 with テクノロジー」です。

 さらに今起きているテクノロジーの進化というのは、顧客ニーズに対してより迅速に応えられるようになっていきます。顧客の健康状態に応じて商品を決めるなどです。そうなってきたときには、さらなるサービスの対価の拡充にもつながるのではないか。これこそが我々がこれから目指していかなくてはいけないテクノロジーの進化なんだろうと思います。

 これまでのサービス産業では、どちらかというとすべての工程を人がやってきました。それに対して我々が目指すのは、すべてをデジタル化するのではなく、人が行うことによって価値を生み出す根源的な部分はやはり人がやらなくてはいけない。テクノロジーに支えられて人が携わることでお客さまの共感を呼び、満足度の向上に寄与する工程を働き手が余裕を持って担うことができるようなサービス産業を実現していかなくてはいけない。そういう問題意識を持っています。