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サービス産業を再定義する

 そうするとまず我々がやらなくてはいけないのは、何がデジタル化できて、何がデジタル化できないのかをはっきりと区別することです。これは実験しないと分かりません。

 先ほどの店舗を「R&D店舗」とあえて言いました。あのお店はグループ全体で今859店舗展開している中で、唯一の持ち株会社の店舗です。将来に対してまず何がデジタル化できるのか。それをデジタル化したらお客さまからどう評価されるのか。そこをまず見てみる必要があると思います。

 そして、人が携わることでお客さまの共感を得られるものは何なのか。これはまさしくサービス産業をもう一度「再定義」することなのではないかなと思います。

 例えば接客でも調理でも、これからの時代変化の中でどんどんテクノロジーに代替される部分が増えていきます。ただ、一気に進むわけではなく一定の時間を伴って変化していく。その中で決してテクノロジーには代替されない、人がやることによって共感を生み出す接客とは何なのか。これが接客の再定義だと思います。

 調理は、テクノロジーでは絶対できないライブ感のあるものというのは何なのか。これも調理を再定義するということです。

 そして店舗マネジメントも再定義が必要です。書籍などではAIやテクノロジーができないこととして、ホスピタリティー、クリエーティビティー、マネジメントがよく出てきます。我々の接客はまさしくホスピタリティーであり、調理はクリエーティビティー、そして店舗マネジメントがマネジメントに当たります。

 難しいのは時間軸があるということです。来年急に変わるわけではなく、変化に合わせて我々自身も用意していくという問題意識を持ってやっているところです。

DXと時間軸
DXと時間軸
(出所:ロイヤルホールディングス)
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 今は第4次産業革命といわれていますが、蒸気機関、電力機関、製造業の自動化から、初めて私はサービス産業の非常に近いところで産業革命が起こっていると感じます。我々が享受できる領域に産業革命が近づいてきているのです。

 私はロイヤルの経営に9年間携わる中で企業の持続性というのは何だろうと考え続けてきました。そこで分かったのはお客さま、従業員、取引先、株主、すべてのステークホルダーの満足度をいかに向上させていくかということが大事なテーマということです。これができるからこそ持続的な成長につながっていくと思います。

 先ほど昔の産業化という話をしましたが、昔はとにかくお店をたくさん出していけば売り上げも上がって利益も上がっていく。そうするとお客さまも喜んでくれる。従業員もどんどん昇格してボーナスもたくさんもらえる。取引先もどんどん取引の拡大が進む。株主も利益が上がって株価が上がっていく。あまり難しく考えなくても、とにかくお店を出せばすべてのステークホルダーの満足度が上がる状態でした。これが資本主義の1つの原理なのだと思います。

 今は何が起きているかというと、その成長が鈍化して生産性が低下すると、お客さまは「何だか最近サービスが悪くなった」と感じます。従業員は「最近昇格がないしボーナスが増えない」、取引先も「最近は値引き交渉しか言ってこない」、株主にとっては株価が下落している。常にすべてのステークホルダーの不満足が生まれてくるのです。

 しかも問題はここで終わりません。ステークホルダーの間で利害対立が起き始めます。

 今なぜ、日本でこれだけ生産性の議論がされているのか考えましょう。GDP(国民総生産)は「人口×生産性」なので、人口が減るわけですから、経済力を維持していくためには生産性が大事だというのはみんな分かるポイントです。