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経営トップに変革への強い意志はあるか

 これからはバックヤードの業務の大半をデジタル化やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)で実行することによって、本社機能については限りなく小さな政府を目指します。人間がやらなくていいという考え方を転換して、人間がやらない方がいいのがデジタル化です。倉庫に管理人がいるから物が紛失する。モニター監視やRFIDタグやSIMで自動監視すれば、ほとんどの業務の改ざんや不正が防げるのが今のデジタル環境です。

 DXは圧倒的な労働生産性の改善です。これまで朝の9時から午後6時半までかかった仕事も、AIやデジタル化によって午前中で終わり、これまでの収入が担保される。デジタル化で就業場所の概念が変われば、瀬戸内海のしまなみ海道が見える丘の上で当社のニチガスの仕事をし、午後はしまなみ海道を自転車で走るとか、父親の介護をするとか、自分のスキルアップのために大学の講義をネット上で受けるといったことも可能です。働き方が変わることで生き方や考え方に変化が起きます。

 このことで社会のモノの価値からコトの価値、時の価値、人間価値に重きを置いた時代になるでしょう。会社に帰属して生きる時代から、コトの価値を求めて生きる時代になる。終身雇用は担保されなくなっても、年功序列もなくなるわけです。自分の価値観に沿って生きられる時代だと私は思います。私は所得倍増の最大の近道はペーパーレスによるデジタル化だと言い続けています。

 それでは、なぜDXに向けた取り組みの多くがPoC(概念実証)の状態で終わってしまうのか。大企業だけではありません。新たなベンチャーの挑戦者はPoC地獄やPoC貧乏でマネタイズ(収益化)までたどり着けません。

DX実装に立ちはだかる課題を克服する6つのポイント
DX実装に立ちはだかる課題を克服する6つのポイント
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 DX実装へ、私たちは6つのポイントがあると思っています。第一はデジタルトランスフォーメーションへ変革するトップの強い意志です。終わりのない旅に出る覚悟。同じ成功を繰り返さない覚悟。強い意志。レガシーシステムとの決別は先延ばしすればするほど難しくなり、コストがかかります。

 老朽化した既存システムの経済損失の影響を示した「2025年の崖」が話題になっています。私たちはもう2023年には意識せざるを得ないときが来ると思っています。捨てる方がコストがかかるという間違ったレトリック。ここが障害になっているのではないでしょうか。

 2つめは基幹系システムの再構築に対する覚悟です。今のシステムの多くは足し算のみで築かれています。新しいイノベーションを持ち込んでも置き場所がありません。言ってみればごみ屋敷です。いずれ必ず建て替えなければならない旅館にリフォームをかけ続けています。

 エネルギー業界で今起きていることは単なる自由化ではなく、自由化を通して新たなイノベーションを創出し、そのメリットを社会が享受することです。大手の独占市場が個人や新興勢力にパワーシフトする大きなムーブメントです。従って業務フローはダウンサイジングに向かう。コンサバティブな業界の構造的問題もあり、内部変革だけでは足りない。外部連携や事業分業が問われています。規制の多いコンサバな業界では、自らイノベーションを起こして自己変革する動機が弱い。既得権とのカニバライゼーションの壁もある。

 システム改革に向けた議論をしているときに、できないことばかり話したがるベンダーのバイアスのかかった担当者もいます。この種の人種は簡単な話を難しくしゃべる癖を持っています。システム再構築は避けられないという覚悟が必要です。細かな不合理を受け入れないと大きな合理性にはたどり着けない。私はネガティブな社員に対して、「これは相談ではないんだよ」と言い切っています。