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2つの「ソウゾウ」の力が問題解決につながる

 ここからは、当社で取り組んでいるデジタルトランスフォーメーションの事例を6つほど説明します。

 実は経団連なども「Society 5.0」という概念を打ち出しています。デジタルトランスフォーメーションと多様な人材を掛け合わせ、社会の問題を解決して未来をつくるというものです。ここでいう多様な人材とは、私は2つの「ソウゾウ」の力がポイントになると思ってます。ソウゾウ力というのは、いろいろな意味がありますね。1つはイマジネーション、つまり想像。もう1つはクリエーティビティー、すなわち創造です。この2つのソウゾウの力で、今まで当たり前だったことを変えていく。そんな取り組みを進めています。ソウゾウだけでなく妄想というのもあるのでは、と言う人もいますね。一見できっこなさそうなことも、真剣に取り組むと答えが出てくると思います。

 第1の事例は空港です。「シンプル&スマート」というコンセプトを掲げてデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいます。航空会社にとって空港は大事な場所ですが、先ほども話しましたように人手不足で求人への応募が以前ほど集まらなくなってきています。定年を迎えたシニアの方にも引き続きがんばってもらわないと業務が回らないということで、現在いろいろな取り組みをしています。

 例えば貨物のトラクターや空港内を移動するバスは無人化の実証実験を始めています。私も実際に乗ったことがあります。航空便の出発時に機体を動かすプッシュバックも、離れたところからリモコン操作できる一種の電気自動車があり、その実証実験を佐賀空港などで始めました。

 「OneID」と呼ばれる顔認証も共同研究中です。既に成田や羽田のイミグレーションでは、日本人は顔認証ゲートにパスポートを置くだけでスムーズに通過できるようになりました。こうした仕組みを出入国だけではなく、保安検査や搭乗口、さらには免税品の販売店まで含めて、省庁横断で1つのシステムにまとめていくことが鍵だと思います。当社だけでなく、当社が加盟しているスターアライアンスや航空会社の国際的な集まりである国際航空運送協会(IATA)でもキーワードになっています。こうした仕組みを世界レベルでどのように標準化するかは簡単でないと思いますが、私も日本人ですので日本のメーカーさんにがんばっていただきたいと思います。

 第2の事例は「乗ると元気になるヒコーキ」というもので、私個人も好きなテーマです。この第1弾として現在開発を進めているのが時差ぼけ解消アプリです。海外渡航に時差はつきものですが、海外へ出発する前の生活において睡眠や食べ物、飲み物をどうするといいか、そして機内ではどう過ごしたらいいか、といったアドバイスをアプリがしてくれます。これを活用して時差ぼけをなくせるように取り組んでいます。これはニューロスペースというスタートアップ企業とのタイアップです。

 第2弾、第3弾として「空の人間ドック」や「機内マインドフルネス」も考えています。航空機で13時間くらいかけて欧米へ行く間、ずっと座っているわけですから、ここを使ってお客さまご自身を元気にしていけないかという発想です。これも米国の大学の先生などとタイアップしています。最近のデジタルトランスフォーメーションはもう、1社ではできないですね。いろいろな研究をしている人とタイアップして進めています。

 これに近い取り組みとして「赤ちゃんが泣かない!?ヒコーキ」というプロジェクトもあります。赤ちゃんは大人と違って耳が気圧の変化に弱く、飛行中に泣くこともあります。東レやコンビ、NTTとタイアップしまして、赤ちゃんがそろそろ泣きそうだということをアプリで機内のお母さまにお伝えして、お母様がミルクをあげて泣くのを防ごうというものです。こういうアイデアで実際に親子連ればかりの航空機を飛ばしました。実際のところ、乗っていた赤ちゃんは大声で泣いていましたが、こういう取り組みをしています。