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移動のあり方を変えていくMaaS

 第5の事例はAVATARです。AVATARは遠隔地にあるロボットを通じてものを見たり聞いたりして、さらにロボットを遠隔操作して物体に触ったりするものです。VRや拡張現実(AR)、ハプティクス(触覚)などの技術を結集し、分身ロボットが作業をします。よく「航空会社がどうして移動しなくていいものに投資をするんだ」と聞かれます。

 実際に取り組んでいるチームメンバーたちによると、世界中の人々で航空機を利用する人はまだ6%しかいない。90数%の人はまだまだ航空機を使っていないそうです。そうした人たちに対して、例えば遠隔地にいる難病患者を医師が遠隔で治療したり、遠隔地の人に授業をしたり、あるいは人が近づけない災害の被災地で分身ロボットを使ったり、といった概念で取り組んでいます。

 実際これがスタートするきっかけになったのは、XPRIZE財団というところが公募した国際賞金レースのテーマを決めるコンテストがあり、当社のANA AVATARチームが応募して受かったことです。この技術はさまざまなところに活用できると考えており、実際プロジェクトを始めるといろいろな方々から「一緒にやろう」とお声がけをいただいています。宇宙航空研究開発機構(JAXA)からも将来、宇宙空間で作業するときにAVATAR技術が役に立つのではとお声がけいただきました。最近では理化学研究所もいらっしゃいました。未来の課題に取り組もうとしている業界は数多いのだと感じています。

 大分県とも意気投合しました。大分県は魚がおいしいですね。羽田空港で釣りざおを持って、大分県の釣り堀で魚を釣り上げる。大分にいる魚の引きの実感が東京で体感できます。釣り上げた魚はANAの貨物でご自宅に運んで食べていただく。そうしたビジネスに直結する世界を夢見ながらやっているところです。

 第6の事例は「デジタルプラットフォームとMaaS」です。当社ではカスタマーエクスペリエンスをCEという略語で呼んでいるのですが、お客さまが予約して空港に行き、機内で過ごし、最後に航空機を降りてご自宅に戻るという、顧客接点のあらゆる場面で当社がお客さまのお役に立てるように、お客さまにご満足いただけるようになろうと始めました。

 こういったものを解決するのがお客さま情報基盤、CE基盤と呼ぶシステムです。当社にはいろいろなシステムがあります。航空機を飛ばすシステム、お客さまが予約をするシステム、整備のシステム、それからマイレージなどです。こういう複雑なシステムを全て1つにつくり替えるのではなく、既存の各システムをつなげて活用していこうというものです。このCE基盤を活用していく取り組みは、先日経済産業省と東京証券取引所による「攻めのIT投資銘柄」で高く評価いただき「DXグランプリ」もいただきました。今、力を入れていこうと思っているのはこの分野です。

 モビリティー・アズ・ア・サービス(MaaS)も新しいムーブメントではないかと思っています。これはソフトバンクとトヨタ自動車とホンダなどが出資するMONET Technologiesと一緒に、鉄道や地方のバス、タクシーなどの会社とともに、MaaSを新しいプラットフォームにしていこうという取り組みです。これが出たときに航空も入れてもらおうと思っています。

 旅行は空港で終わるものではなく、空港から鉄道などに乗り継ぐことも多いでしょう。独ルフトハンザは航空便と鉄道をスムーズに乗り継げるよう、双方の切符を接続して販売する仕組みを持っています。すると、例えば私は鹿児島出身ですが、鹿児島県の田舎からドイツのノイシュバンシュタイン城に行く際、今までは旅行会社が一生懸命個別に手配していたのですが、プラットフォーム化することでスムーズに、そして便利に予約できるようになります。あるいは航空便の時間が変わったら、迎えに来てもらうバスやタクシーの時間も調整していくことが考えられます。MaaSはこれからのモビリティーサービスの中心になっていくのではと思っており、当社もMaaS推進部を新設し動き出しました。