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 「海運のコモディティー化や顧客のグローバル化など経営環境が急激に変化している。日本郵船は2020年で135周年を迎える歴史の長い企業だ。環境変化に対応するには、過去から蓄積した暗黙知やノウハウなどの知的資産をデジタル化することで有効活用し、これまで以上の安全運航と効率運航につなげていく必要がある」。

 2019年7月10日、IT Japan Award 2019の贈賞式の後の特別講演で、日本郵船のCIO(最高情報責任者)である丸山英聡専務は船舶IoTに取り組む経営の狙いを語った。

特別講演する日本郵船CIOの丸山英聡専務
特別講演する日本郵船CIOの丸山英聡専務
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 13回目を数えるIT Japan Awardの審査委員会には、AI(人工知能)やIoTを活用した事例、事業ニーズに即応すべくアジャイル開発に取り組む事例など、デジタル時代を象徴する先進事例が多数ノミネートされた。単なるPoC(概念実証)ではなく、実際にビジネスの現場で活用され効果を上げているものばかり。そんな激戦を制したのは、日本郵船の船舶IoTだった。

 グランプリに輝いた「SIMS(Ship Information Management System)」は、保有する約200隻の船舶のエンジンなどにIoT機器を取り付け、データを衛星経由で集めて陸上の船舶管理者が分析してトラブル予兆の有無などを確認するシステムだ。大型タンカーのエンジン故障を事前に察知して対処するなど成果を挙げてきた。

 10年越しのプロジェクトとして他の事例に比べ一日の長があり、トラブル防止などに効果を発揮している実績が認められグランプリを射止めた。

 「いち早くIoTをフル活用するとともに、世界規模のネットワークによって船の安全で効率的な運航を実現する取り組みだ。日本の産業を支える重責を担う海運業の使命を果たすものとして高く評価したい」と審査委員の伊藤重隆 情報システム学会会長は語る。

 準グランプリはキユーピーと積水ハウスが受賞した。キユーピーは工場での不良品選別にAIを活用している。不良品ではなく良品をAIに識別させる逆転の発想でAIの精度を高めた。積水ハウスは1万7000台のiPadを全社員に配布し、IT部門がアジャイル開発によって200本以上のアプリを内製。働き方改革を推進している。

 特別賞は近畿大学とコカ・コーラ ボトラーズジャパン。近畿大学は研究の一環としてマダイの稚魚を育てており、稚魚選別をAIで効率化した。コカ・コーラはオフィス向け飲料販売で、QRコード決済を活用して疑似的なIoTシステムを構築し、売上高や在庫を即時に把握する仕組みを作った。

 IT Japan Awardは日経コンピュータが2007年に創設した。優れたIT活用事例に光を当て、成功のノウハウを広く共有するのが狙い。今年度の審査対象は日経コンピュータ2018年5月10日号から2019年4月18日号、および日経 xTECHに掲載した事例である。