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キユーピー
不良品ではなく良品を選別 逆転の発想でAIを生かす

 「不良品ではなく良品を判定させるという逆転の発想と、不良品を取り除く空気砲などの創意工夫により、AIを生産現場に定着させた取り組みは高い評価に値する」(審査委員長の桔梗原富夫 日経BP総研フェロー)

 キユーピーの鳥栖工場には作業員の目の前に広がる何百個という「ダイスポテト」を選別する作業がある。ダイスポテトはじゃがいもの皮をむいて1センチ角の大きさに切ったものだ。選別作業にはダイスポテトに付いたミリ単位の黒い斑点まで見抜く熟練の技が必要になる。

 鳥栖工場はベビーフードの製造を担う。赤ちゃんが食べるベビーフードは何より安全が大切。従来は熟練の作業員が目を皿のようにして不良品を取り除いてきた。

 キユーピーはこの作業をAIで代替することを目指した。「AIが得意とする画像認識の技術を最大限に発揮できる」(生産技術部の荻野武 未来技術推進担当部長)と判断したからだ。

キユーピーの生産技術部の荻野武未来技術推進担当部長(前列左)ら開発メンバー
キユーピーの生産技術部の荻野武未来技術推進担当部長(前列左)ら開発メンバー
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 AIシステムの開発にあたっては、不良品ではなく良品を選別する方式を採用した。不良品のデータが少ないからだ。人が判断していた「不良」の定義も難しい。良品と不良品の境界線は、人によって判断がぶれるほどだ。そこで良品データを読み込み、そのデータから外れるものを不良品と見なす仕組みにしたわけだ。

図 従来とAI導入時のダイスポテト判別の違い
図 従来とAI導入時のダイスポテト判別の違い
人の目は不良品、AIは良品を判断(写真提供:キユーピー)
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 学習モデルを作るために読み込んだ良品データはダイスポテトの数にして約100万個。画像件数は約1万枚に及んだ。試験運用できる見込みが立ったためプロトタイプを作成し、鳥栖工場に導入した。当初、判断が難しいダイスポテトは良品としていたが、チューニングを繰り返し、人が良品とするダイスポテトはAIが判断しても良品と判断するレベルにまで高めたという。

 2017年4月に作った2号機には、除去機能として空気砲も組み込んだ。画像認識で不良品と認識したダイスポテトが存在した場合、空気を噴射して取り除く仕組みだ。その後も作業員が操作するインターフェースの改良など、システムを進化させ続けている。