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年収1000万円の「派遣社員」という生き方

 派遣情報サイト「エン派遣」を運営するエン・ジャパンによると、三大都市圏における派遣ITエンジニアの平均時給は2019年5月で2265円と過去最高を記録した。2年前まで2000円ほどを推移していたが、その後は上昇基調にある。時給の上昇に伴い、高給の派遣エンジニアが誕生している。

図 派遣ITエンジニアの平均時給
図 派遣ITエンジニアの平均時給
2019年5月は2250円を超え、過去最高を記録(出所:エン・ジャパン)
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 そんな1人が大手システム開発会社で派遣社員として働く松田浩二氏(仮名、47歳)だ。

 松田氏は派遣元企業の正社員として派遣される「常用型派遣」の形で、10年以上にわたり様々な開発プロジェクトで活躍した。役割はシステム開発案件におけるPM(プロジェクトマネジャー)だ。

 時給は5000円を超えており、給与明細には80万円を超える数字が毎月並ぶ。残業代が付く月は額面が100万円を超えることも珍しくない。「年収は数年前に1000万円を超え、そこからはずっとその水準を維持している」(松田氏)。

 松田氏はITエンジニア100人が参加する数億円規模のプロジェクトを率いながらも、赤字プロジェクトを出したことがないのが自慢だ。「1日ごとに状況が変わる開発の進捗や、外注するエンジニアの単価、顧客の要望、所属するシステム開発会社に残る利益を調整するのは得意。そこが評価されているのだろう」と分析する。

 派遣社員の動向に詳しいパソナテックの錦戸新吾HRソリューション事業部長は「企業の利益に直結する貢献をしている派遣エンジニアであれば、年収1000万円クラスは珍しくない」と説明する。松田氏はまさにこの例にあてはまると言える。

 錦戸氏によると、受注好調なIT企業はプロジェクトの収益を左右するPMが不足傾向にあるという。その結果、パソナテックのデータではここ4年でPMの時給単価は22.7%上昇している。「クラウド関連のインフラに強いエンジニアと並んで単価の上昇が著しい職種」(錦戸氏)だという。

 松田氏の派遣会社とシステム開発会社との契約は3カ月ごとの更新になっている。いつ契約を切られるか分からず不安定な立場ではある。

 しかし、松田氏は意に介さない。リスクを考えてマンションのローンも早めに完済。先日、データベース販売で有名な企業から月160万円で社員にならないかと引き抜きの打診を受けたという。

 「派遣を始めたころと比べ、スキルも人脈もある。派遣先のシステム開発会社から契約を切られても、私のスキルを評価する企業は外に必ずいる」と、派遣エンジニアとしての生き方に自信を見せた。