全3581文字
PR

 国内の携帯通信業界は今まさに変革期を迎えている。次世代通信規格「5G」の商用サービスが2020年にも始まる一方、2019年10月には新たに楽天が参入、競争環境が一変する見込みだ。特集の第4回はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯大手3社について、2018年度(2019年3月期)の有価証券報告書を基に売上高や収益力、従業員の給与や取締役報酬などの項目を分析した。また参考値としてソフトバンクグループのデータも掲載する。

売上高ランキング
順位企業名売上高伸び率営業利益伸び率
1KDDI5兆803億円0.8%1兆137億円5.3%
2NTTドコモ4兆84081.71兆1362.7
3ソフトバンク3兆74634.67194 12.8
参考ソフトバンクグループ9兆60224.82兆353980.5

 大手3社の中で売上高のトップは5兆803億円のKDDI。前期から0.8%伸ばした。モバイル通信料や端末販売の収入が減少したものの、エネルギー事業の収入増加や英会話教室のイーオンホールディングスのグループ化などにより微増となった。売上高に占める携帯通信サービスの割合は34.9%である。営業利益は前年度比5.3%増の1兆137億円となり、初めて1兆円の大台に乗った。

 売上高2位はNTTドコモで前年度比1.7%増の4兆8408億円。「ドコモ光」の契約数が拡大したことで光通信サービス事業が増収になった。携帯通信サービスの収入が横ばいとなる一方で、端末販売に占める高単価スマートフォンの比率が高まり、機器販売収入が増えた。営業利益は前年度比2.7%増の1兆136億円となった。

 売上高に占める携帯通信サービスの割合は58.8%と大手3社の中で最も高く、同サービスの収入では他の2社を引き離しトップに立つ。NTTドコモはNTTグループにおける携帯通信専業の企業として発足したこともあり、同社が最も携帯通信サービスの収入に依存している。

 3位のソフトバンクは3兆7463億円で前年度比4.6%増。主力の個人向け携帯通信サービスで契約数が伸び、法人向けの通信事業も伸びた。売上高に占める携帯通信サービスの割合は43.5%である。

 2018年3月には、親会社ソフトバンクグループから「ソフトバンク」ブランドの商標利用権を買い取っており、ソフトバンクグループに支払うブランド使用料がなくなり営業利益は同12.8%増の7194億円となった。

 MVNO(仮想移動体通信事業者)の台頭や総務省による通信料の値下げ圧力もあり、3社の本業である携帯通信事業は今後大きな成長を見込みづらい。各社は業務提携やM&A(合併・買収)を通じ、金融や娯楽といった非通信事業などで収益を伸ばす考えだ。

 参考値として掲載したソフトバンクグループの売上高は9兆6022億円で前年度比4.8%増。ソフトバンク事業や米スプリントの事業が増収で、利益も改善した。10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」などが出資する企業の評価益が寄与し、営業利益は80.5%増の2兆3539億円となった。