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 建設業界のみなさんは「RPA」をご存じだろうか。IT業界や企業の情報システム部門では数年前から普及しており、今ではかなり一般的になっている。

 RPAはロボティック・プロセス・オートメーションの略で、業務プロセスをロボットで自動化することを意味する。ただし、ここで言うロボットとはハードではなく、ソフトだ。RPAのロボットは「ソフトウエアロボット」と呼ばれることもある。このロボットが「人がパソコンを使って手作業でこなしている業務」を自動処理してくれる。

 データを入力したり転記したりといった単純作業が、RPAの最初の対象業務になることが多い。人がマウスやキーボードを操作して仕事をこなすのではなく、ロボットが実行する。ロボットはあらかじめプログラムされた手順通りに、入力作業などを代行してくれる。ロボットは疲れないし、ミスもなく正確だ。何より、単純作業でも飽きない。

 RPAと聞いて、「何を今さら」と思う読者も多いかもしれない。だが全社展開はこれからという企業が、まだまだたくさんあるのが実情である。大手ゼネコンの清水建設も、そんな1社だ。

 清水建設が国内外の全部門およびグループ会社にRPAを展開するというので、話を聞いてきた。今回のデジタル活用(デジカツ)はITど真ん中の話だが、建設会社も例外ではない重要なテーマなので、ぜひ一読してほしい。

 2020年、清水建設は「デジタルゼネコン」になることを、建設業界でいち早く宣言した。フロントランナーを目指し、3本柱となるデジタル戦略を掲げた。「日常業務のデジタル化」「ものづくりのデジタル化」「提供する施設・サービスのデジタル化」である。

 RPAの全社展開は、日常業務のデジタル化に当たる。建設会社にも無数の事務作業が存在する。日常業務をいかに効率よくこなすかは、永遠の課題だ。そこにRPAを投入することを決めた。日立ソリューションズの協力を得て、グループ共通のRPAを20年末に展開し始めたところである。

清水建設でRPAを利用している様子。無人のパソコンで「ソフトウエアロボット」が業務をこなしている(写真:清水建設)
清水建設でRPAを利用している様子。無人のパソコンで「ソフトウエアロボット」が業務をこなしている(写真:清水建設)
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 日常業務にRPAを適用することで、早ければ21年度中にも、繰り返し行う単純作業やデータ作成・集計作業などの間接業務の15%を自動化するという意欲的な方針を打ち出した。事務業務は本社や支店に限ったものではない。建設会社である清水建設には、工事現場に併設した作業所が全国にある。各所で日々、事務作業をこなしている。ここにもRPAを持ち込む。

 RPAの全社展開を始めた直後、21年の年明け早々に、緊急事態宣言が発令された。清水建設も内勤者のテレワークが待ったなしになった。これまでオフィスでこなしていた事務作業を自宅で実施する機会が、今後は増えていくに違いない。

テレワークの実施で出勤者が減っている清水建設のオフィス(写真:清水建設)
テレワークの実施で出勤者が減っている清水建設のオフィス(写真:清水建設)
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 RPAに限った話ではないが、日常業務のデジタル化や効率化は、どの企業も避けては通れない。自動化できるものは、ロボットに任せてしまいたいのが本音だろう。

 もっとも、清水建設では特定の部署や支店で以前から、RPAを利用していた。パソコンで動くNTTデータのRPAソフト「WinActor(ウィンアクター)」を中心に合計4種類の製品を使い、現場の判断で個別にロボットを開発・運用していた。ロボットの数は合計すると、100体以上あった。

既に稼働していた約100体のRPAロボットの用途。最も多いのは「繰り返し処理の自動化」で約4割を占める(資料:清水建設)
既に稼働していた約100体のRPAロボットの用途。最も多いのは「繰り返し処理の自動化」で約4割を占める(資料:清水建設)
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 だがこの運用態勢のままでは、全社展開が難しい。「利用が部署内に閉じており、横展開や再利用がしにくい。バラバラなソフトを個別に購入しているので、コストも割高だ」。清水建設デジタル戦略推進室情報システム部事務系システム開発グループグループ長の川田彰信氏は、そう語る。