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 今回は、巨大な建造物を支える鉄骨にまつわるデジタル活用(デジカツ)の話である。しかも焦点は鉄骨に開ける無数の「穴」だ。

 建築全体から見れば、非常に小さなトピックに思える。だがこの領域で大手ゼネコンのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)推進者が企業の垣根を越えて協力し合い、一緒に課題を解決しようとしている。建設業界において、今後の問題解決のモデルケースになる可能性を秘めた試みを紹介したい。

 東京五輪・パラリンピックの開催を約半年後に控えた今、あちこちで大型ビルの開業が相次いでいる。その多くで内部に鉄骨が利用されている。

 高層ビルには我々の目には見えないところで、大量の「鉄骨梁」が使われている。それは言われてみれば、誰でも何となく想像できると思う。ただ、鉄骨梁には最近、大量の穴(貫通孔)が開いていることに気付いている一般人は、私を含めて少ないに違いない。

 貫通孔がある鉄骨梁を「有孔梁」と呼ぶ。建設業界の人には、なじみ深いものだろう。

鉄骨梁に設けた貫通孔の例(写真:building SMART Japan 構造設計小委員会 鉄骨梁貫通補強WG)
鉄骨梁に設けた貫通孔の例(写真:building SMART Japan 構造設計小委員会 鉄骨梁貫通補強WG)
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 近年、空調や衛生(上下水など)、電気など様々な設備の配管を通すため、鉄骨梁に貫通孔を開ける要求が設備担当側から寄せられることが多くなった。鉄骨梁に貫通孔を開け、そこに配管できれば、建物の空間をより広く使えるメリットがあるからだ。

 かつては鉄骨梁の上下に配管を通すか、鉄板を溶接して貫通孔を設けるのが普通だった。それが今は、設備配管の手法が大きく変わった。貫通孔がない場合と同等の構造的な性能を有孔梁に持たせるため、開口補強リング材を使うようになった。市販の「補強リング」が広く用いられている。鉄板を溶接するよりもコストが安いため、採用が一気に広がった。今どきの建物の鉄骨梁が貫通孔だらけになったのは、補強リングのおかげともいえる。

有孔梁に管を通す形で設備設計するときのCADの画面例。鉄骨梁に貫通孔がなければ、梁の上下で配管にかなりのスペースを使ってしまうことがイメージできる(資料:building SMART Japan 構造設計小委員会 鉄骨梁貫通補強WG)
有孔梁に管を通す形で設備設計するときのCADの画面例。鉄骨梁に貫通孔がなければ、梁の上下で配管にかなりのスペースを使ってしまうことがイメージできる(資料:building SMART Japan 構造設計小委員会 鉄骨梁貫通補強WG)
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 有孔梁が多用され、建て主は空間の有効利用という恩恵を受けられるようになった。ただゼネコン各社は、ある悩みを抱え込むことになってしまった。

 補強リングのメーカーは独自の「補強成立性計算ソフト」を用意している。それらは鉄骨や設備のBIMツールと互換性がなく、データ連携ができない。鉄骨BIM、設備BIM、リングの補強成立性計算ソフトをつなぐ共通フォーマットが確立されていなかった。そのため、担当者の手作業が大きく増えた。

 貫通孔の数は増える一方なのに、末端のツールまでデータ連携ができていない。貫通孔を開けるための検証は1個ずつ、全部実施する必要がある。作業は地味だが、積み上げると膨大な工数になる。

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