前回このコラムで紹介した、国土交通省が主導する3D都市モデルの整備プロジェクト「Project PLATEAU(プラトー)」の記事には大きな反響があった。多くの読者が、PLATEAUが持つポテンシャルに気づいてくれたのだと思う。
PLATEAUの3D都市モデルは、専用サイトで一部公開が始まっている(https://www.mlit.go.jp/plateau/)。Webベースのビューワー「PLATEAU VIEW(プラトービュー)」(ベータ版)を使えば、誰でも見られる。関心がある人は、ぜひ体験してほしい。
一例として前回は、PLATEAUの電子地図が備える「建物の高さ」という意味情報(セマンティック)と、河川が氾濫したときの浸水ランクを示したハザードマップの情報を重ねたケースを取り上げた。建物の高さといった意味情報を、PLATEAUでは「CityGML」という記述言語で書き込んでいる。
今回は、私自身がPLATEAU VIEWを操作し、先行して整備されている東京23区の3D都市モデルを実際に使ってみた。私が選んだ題材は、都内で水害の危険性が指摘されている江戸川区の分析である。PLATEAU VIEWではどのように表示されるかを確かめた。
江戸川区は2019年5月に、最新版の「江戸川区水害ハザードマップ」を公開している。その内容は当時、大きな話題になった。
江戸川区は荒川や江戸川といった河川の最下流域に位置する。その先には、東京湾が広がる。関東地方に降った雨の大半が、最終的に江戸川区に集まるという。同区の陸域7割は、満潮時の水面よりも低い「海抜ゼロメートル地帯」になっている。そのため、19年公開のハザードマップでは、水害が想定されるときに「区内にとどまるのは危険です!」「ここにいてはダメです」という思い切った表現で、区民に注意を呼びかけた。
以下の5つの画像は、私がPLATEAU VIEWを使って導いた画面である。江戸川区は画面左を流れる荒川と、中央を流れる旧江戸川、画面右の江戸川に囲まれた地域に位置する。河川が氾濫したときの「浸水想定区域図」を使って、水害時の浸水ランクで江戸川区の3D都市モデルを色分けしてみた。
実はこれらの表示結果は、江戸川区の水害ハザードマップに記載された情報と同じものである。ただし、ハザードマップが2次元(2D)の地図なのに対し、PLATEAU VIEWは3Dで表現できる。しかも建物の高さは正確だ。
PLATEAU VIEWを見ていると、「3D都市モデルに記述されている情報は、どうやって集めたのか」が気になってくる。次回、詳しく紹介する予定だが、ここでは「都市計画基本図」と「航空測量」を組み合わせて、そこに「都市計画基礎調査情報」などを盛り込んで、3D都市モデルを生成しているとだけ理解しておいてほしい。