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ビルが林立する都心で飛行ルートを事前検証

 実験したのは、ドローンや人工知能(AI)などを開発しているA.L.I. Technologies(東京・港)である。東京駅周辺と石川県加賀市にある片山津温泉の2カ所で、21年3月に実施した。

 高層ビルが林立する東京駅周辺エリアで、安全かつ効率的にドローンを飛ばすため、3D都市モデルを使った飛行シミュレーションを実施した。ビルが複雑に立ち並ぶ都心でドローンが安全航行するには、ルートに近い建物などの障害物を慎重に確認する必要がある。これまでのやり方では現地調査に手間とコストがかかり、ドローン物流のスタートに向けた課題の1つになっていた。

ビルが立ち並ぶ場所でドローンを飛ばすには建物などの障害物を確認しながら、事前に飛行ルートを検証することが欠かせない(資料:国土交通省、A.L.I. Technologies)
ビルが立ち並ぶ場所でドローンを飛ばすには建物などの障害物を確認しながら、事前に飛行ルートを検証することが欠かせない(資料:国土交通省、A.L.I. Technologies)
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 3D都市モデルは、垂直・水平方向の寸法精度が高い。そのため、飛行シミュレーションを実施しやすい。しかもLOD2以上のモデルはビジュアルが良く、ドローンを配送に使うなら、荷主や関係当局、運航者などの間で飛行ルートを共有しやすいというメリットもある。

 A.L.I. Technologiesは実験に合わせて、都心の建築物を再現した3D都市モデルを取り込んだ飛行シミュレーターを開発した。航空法にのっとった自動空路可視化機能による3Dでの事前飛行ルートシミュレーションや、運航者トレーニングをバーチャル空間で試みた。現地調査の工程を効率化できるかを確認したわけである。

 さらに、同社のドローン管制システム「C.O.S.M.O.S(コスモス)」を、CityGMLのデータを取り込めるように改良した。C.O.S.M.O.Sとはドローンの航空管制を可能にするトラフィック管理プラットフォームのことで、ドローンの自動運用に必要な機体の健全性や運用の確実性、安全性などを計画・監視・管理する機能を備える。

 飛行シミュレーターで生成したルートをC.O.S.M.O.Sに取り込めば、ドローンをシミュレーションと同じ経路で飛ばせる。事前に現場確認に赴く手間が減り、飛行ルートの設定作業を軽減できる。ただし、今回の実験はあくまでも3D都市モデルを使った飛行シミュレーションの検証なので、算出したルートで実際にドローンを飛ばしてみたわけではない。

 シミュレーションの手順は、まず3D都市モデルの中にドローンの離陸と着陸のポイントを設定する。そのうえで「建物との距離を30m以上確保する」といった規制を順守しつつ、最適な飛行ルートを算出する。東京駅周辺では、仮に1~2kmの飛行距離を設定した。

ドローンの離陸と着陸のポイントを指定したうえで、建物との距離の確保といった規制を守りながら最適な飛行ルートを算出する(資料:国土交通省、A.L.I. Technologies)
ドローンの離陸と着陸のポイントを指定したうえで、建物との距離の確保といった規制を守りながら最適な飛行ルートを算出する(資料:国土交通省、A.L.I. Technologies)
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 3D都市モデルには、建物の高さが含まれている。「ドローンの飛行ルートの設定や各種シミュレーションには有用性が高い」(A.L.I. Technologies)という。A.L.I. Technologiesは25年までに、都市部でドローン物流の導入を計画している。