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 今回のデジタル活用(デジカツ)は、3次元(3D)赤外線スキャンカメラを使った、建物内部の正確な記録についてだ。

 昨今、既存の建物をリニューアルやリノベーションする前や解体する前に、建物内部の情報を3Dモデルで保存しておこうという機運が高まっている。災害が多い日本では歴史的な建造物が被災して損傷する前に、建物の情報を残しておく大切さも叫ばれ出した。

 だからといって、スナップショットのような写真をたくさん撮っても、建物全てを正確に記録するのは難しい。空間のつながりやサイズ感が分かりにくいからだ。それが3D赤外線スキャンカメラを使うと、建物の内部を丸ごと、3Dの立体画像データとして記録できる。まさに「デジタルツイン(電子的に再現した双子の意味)」である。しかも操作は簡単だ。

 撮影した写真を継ぎ目なく合成してくれる、便利なクラウドサービスも用意されている。画像合成クラウドをタブレットから使えば、立体画像がその場で出来上がる。同じ3Dスキャンでも「点群データ」の取得とは異なり、写真なので現物をありのままの姿で記録できるというメリットもある。誰でも室内の様子を即座に理解できる分かりやすさが特徴の1つだ。

3D赤外線スキャンカメラをiPadで操作する私。撮影結果や合成画像は、その場でiPadに表示される(写真:日経アーキテクチュア)
3D赤外線スキャンカメラをiPadで操作する私。撮影結果や合成画像は、その場でiPadに表示される(写真:日経アーキテクチュア)
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 建物の形状を測定・記録する方法は点群データを含めて、いくつもある。私が今回挑戦したのは、3D赤外線スキャンカメラと画像合成クラウドによる撮影である。

 建物の3Dモデルを建築に携わる関係者の間で共有するサービスを2019年末に展開し始めた大成建設に協力を依頼。手っ取り早く、取材で訪れた東京・西新宿にある同社本社の会議室を丸ごと、3Dモデルにしてみることにした。事前のレクチャーなどはなく、ぶっつけ本番でトライしたが、すぐに操作できた。この気軽さがいい。

 使った機材は、米マーターポート(Matterport)の3D赤外線スキャンカメラである。本体は、高さが約230mm、幅が約260mm、奥行きが約110mmの黒い箱のような装置だ。前面にカメラが6つ、赤外線センサーが3つ付いている。1台が約50万円。プロのカメラマンが使う撮影機材と大差ない値段だ。

米マーターポート(Matterport)の3D赤外線スキャンカメラ(写真:日経アーキテクチュア)
米マーターポート(Matterport)の3D赤外線スキャンカメラ(写真:日経アーキテクチュア)
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本体前面にカメラが6つ、赤外線センサーが3つ付いている(写真:日経アーキテクチュア)
本体前面にカメラが6つ、赤外線センサーが3つ付いている(写真:日経アーキテクチュア)
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 そもそも用途が異なるが、私は20年1月に「測量ロボ」を使った位置出しなどを体験した。このときの測量ロボは1台が300万円以上と高額だった。測量機なので計測誤差はほとんどないが、値が張る。

 マーターポートの3D赤外線スキャンカメラは、建設業界向けに用途を限ったものではない。だが日本のゼネコンでの導入実績が増えてきた。

 一足早く利用が始まったのは不動産業界。住宅を販売したり貸したりする際、物件の内見代わりに、まず3D画像を顧客に見せられるので重宝されている。マーターポートの普及組織も国内に立ち上がったところだ。

 マーターポートの話はあれこれ言葉で説明するよりも、とにかく画像を見てもらった方が理解が早い。私が撮影した会議室の写真の1つがこれだ。

大成建設の会議室を私がマーターポートで撮影して回り、その場で360度画像に合成したもの。左が大成建設建築総本部生産技術推進部の田中吉史次長、中央が私、右がマーターポートを使った撮影サービス「3D+ONE」を手掛けるsognoのカメラマン。窓の外に見える建物は、外観が特徴的な東京モード学園のコクーンタワー(写真:大成建設)
大成建設の会議室を私がマーターポートで撮影して回り、その場で360度画像に合成したもの。左が大成建設建築総本部生産技術推進部の田中吉史次長、中央が私、右がマーターポートを使った撮影サービス「3D+ONE」を手掛けるsognoのカメラマン。窓の外に見える建物は、外観が特徴的な東京モード学園のコクーンタワー(写真:大成建設)
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 上の写真だけ見ると、会議室の端から広角レンズを付けたカメラや360度カメラで撮影した写真にしか見えないかもしれない。しかし実際には、会議室の中を歩き回っているような画像が見られる。写真を見る向きや角度をiPadの画面で自由に変えられる。例えば、会議室を逆方向から見たり、真横や斜め、天井から見たような表示も可能だ。

 注目したいのは、写真の手前部分に表示されたテーブルの寸法(1.78m)の数字である。iPadで写真の2点を指定すると、長さが表示される。この写真は会議室にある全てのモノの寸法までほぼ正確に記録しており、長さを割り出す目的に使える。とても便利である。

 寸法を表示できるのは、赤外線センサーでカメラからの距離を測りながら、写真を撮影しているからだ。ただし、マーターポートの場合、赤外線センサーが届く範囲が数メートル程度に限られる。細長い会議室を完全に記録するには、1回の撮影では無理。この会議室だと、カメラの設置位置を変えながら、最低でも部屋の四隅を含む7~8カ所にカメラを移動して撮影する必要があった。本体の重さは3kg強で、三脚を加えると10kg前後あるが、持ち運ぶのはそれほど苦痛ではない。

撮影した位置は、iPadに青い丸印で表示される(写真:日経アーキテクチュア)
撮影した位置は、iPadに青い丸印で表示される(写真:日経アーキテクチュア)
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