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オペレーターの心身への負担が激減

 大型タワークレーンを利用するには、管轄する労働基準監督署に届け出をして検査を受けなければならない。TawaRemoは法令を順守して開発しているとはいえ、初めての現場投入になるので、鹿島と竹中工務店はあらかじめ労働基準監督署に相談した。

 「事前に実機を見てもらい、操作性や安全性を説明したうえで関係者と協議し、そのうえで検査を受けた。こうして検査に合格することができた」(鹿島機械部機械技術イノベーショングループ課長代理の郡山純氏)

労働基準監督署の検査に合格し、TawaRemoの現場投入が可能になった(写真:日経クロステック)
労働基準監督署の検査に合格し、TawaRemoの現場投入が可能になった(写真:日経クロステック)
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 遠隔操作の恩恵は計り知れない。タワークレーンの業務は過酷な仕事だからだ。

 オペレーターは作業時に、タワークレーン頂部の運転席まで約50mもの距離をはしごで上る必要がある。怖いし、疲れる。しかも一度運転席に座ったら、作業が終わるまでずっと高所にとどまらなければならない。孤独との闘いだ。食事やトイレも不自由な環境で働き続ける。

タワークレーンを操作するオペレーターの負担は大きく、現状のままでは人材確保が難しい(写真:日経クロステック)
タワークレーンを操作するオペレーターの負担は大きく、現状のままでは人材確保が難しい(写真:日経クロステック)
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 風や地震などでクレーンが揺れると、恐怖を感じるだろう。そもそも高所恐怖症の人は、じっとしていられないはずだ。オペレーターの負担は心身ともに大きく、作業環境の改善が強く求められてきた。

 工事事務所の所長である鹿島東京建築支店の神山良知氏は、「今のままではタワークレーンの担い手がいなくなってしまう」と、オペレーターの不足に危機感を募らせる。

 TawaRemoが普及すれば、状況は一変する。高所作業の負担やリスクがなくなるうえ、経験が浅いオペレーターは地上にいながらトレーニングを受けられる。

 何より、高所の個室で独りぼっちという厳しい環境から抜け出せる。労働環境の改善効果は大きい。地上の操作室にいれば、同僚と会話することもできるし、トイレにも行きやすい。はしごの上り下りは必要ない。

 鹿島と竹中工務店は今後、清水建設も加えた3社連合でTawaRemoの実現場での検証を進めていく計画だ。21年8月には竹中工務店が関わる大阪の建設現場に、現在開発中の「専用コックピット」を導入する予定である。

開発中の「専用コックピット」。タワークレーンに取り付けたジャイロ(角速度)センサーで、運転席の振動や揺れを計測。コックピットで上空の運転席の状態を体感できる(写真:鹿島、竹中工務店)
開発中の「専用コックピット」。タワークレーンに取り付けたジャイロ(角速度)センサーで、運転席の振動や揺れを計測。コックピットで上空の運転席の状態を体感できる(写真:鹿島、竹中工務店)
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