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 今回のデジタル活用(デジカツ)は、前回の続きだ。野村不動産が築35年の高級賃貸マンションを改修し、分譲マンション「プラウド上原フォレスト」として売り出した。改修する既存棟と、ガラス張りの増築棟を接続。合計15戸から成る「億ション」を2020年3月に完成させた。

2020年3月に完成した高級分譲マンション「プラウド上原フォレスト」。改修した既存棟(写真左側)と新築したガラス張りの「増築棟」(写真右側)を接続している(写真:竹中工務店)
2020年3月に完成した高級分譲マンション「プラウド上原フォレスト」。改修した既存棟(写真左側)と新築したガラス張りの「増築棟」(写真右側)を接続している(写真:竹中工務店)
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曲線のラインとタイル張りが目を引く、既存棟の外観(写真:竹中工務店)
曲線のラインとタイル張りが目を引く、既存棟の外観(写真:竹中工務店)
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 改修の設計・施工を手掛けた竹中工務店は、既存棟のコンクリートの躯体(くたい)だけを残してスケルトン状態にした。それを3次元(3D)スキャンして、正確な3D座標(点群)を収集。立体モデル(以下、点群モデル)を作成した。

コンクリートの躯体だけを残し、スケルトン状態にした既存棟の内部(写真:竹中工務店)
コンクリートの躯体だけを残し、スケルトン状態にした既存棟の内部(写真:竹中工務店)
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 点群の収集で利用した装置は、ファロージャパン(愛知県長久手市)の3Dレーザースキャナー「FARO Focus3D X330」である。建物の壁や天井などにレーザーを照射し、3D座標を得る。点の集合体で建物の仮想モデルを形づくれる。

3Dレーザースキャナー「FARO Focus3D X330」で、既存棟の躯体の点群データを収集した(写真:竹中工務店)
3Dレーザースキャナー「FARO Focus3D X330」で、既存棟の躯体の点群データを収集した(写真:竹中工務店)
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躯体の隅々まで3Dスキャンしていく(写真:竹中工務店)
躯体の隅々まで3Dスキャンしていく(写真:竹中工務店)
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地上1階を3Dスキャンして点群データを集め、立体モデルにしたもの(資料:竹中工務店)
地上1階を3Dスキャンして点群データを集め、立体モデルにしたもの(資料:竹中工務店)
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 一方、約40年前に手書きされた竣工図に基づいて、立体モデル(以下、竣工図モデル)も作成した。

約40年前に手書きされた竣工図だけは残っていた。これが正確であるという保証がなかった(資料:竹中工務店)
約40年前に手書きされた竣工図だけは残っていた。これが正確であるという保証がなかった(資料:竹中工務店)
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 竹中工務店は点群モデルと竣工図モデルを重ね合わせて、違いを明らかにした。実際、梁(はり)の長さや厚さが違うといったずれが見つかった。

40年前の竣工図を基に作成したモデル(グレー)と、3Dスキャンで作成した点群モデル(フロアごとに色分け)を重ね合わせたところ(資料:竹中工務店)
40年前の竣工図を基に作成したモデル(グレー)と、3Dスキャンで作成した点群モデル(フロアごとに色分け)を重ね合わせたところ(資料:竹中工務店)
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 では、点群モデルと竣工図モデルを重ね合わせた後、竹中工務店はどのように最終的な改修プランを練り上げたのか。さらに掘り下げてみよう。