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 建物の空間全体を丸ごと撮影し、3D(3次元)で記録・保存できる赤外線スキャンカメラ「マーターポート(Matterport)」の利用例を、前回のデジタル活用(デジカツ)で詳しく紹介した。建築家の前川國男の自邸である「新・前川國男邸」の「360度&シークエンス(連続)」の3Dモデルは、建築関係者なら見ておいて損はない(https://archihatch.com/archibank/924)。

建築家の前川國男の自邸である「新・前川國男邸」をマーターポートで撮影した3D空間。部屋を横からのぞき込んだような「ドールハウス」ビューと呼ばれる立体表現で見たときの様子(資料:ARCHI HATCH)
建築家の前川國男の自邸である「新・前川國男邸」をマーターポートで撮影した3D空間。部屋を横からのぞき込んだような「ドールハウス」ビューと呼ばれる立体表現で見たときの様子(資料:ARCHI HATCH)
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 緊急事態宣言中だった2020年5月13日、新・前川國男邸を含む建築空間のオンライン体験サービス「ARCHI HATCH(アーキハッチ)」が始まった。新・前川國男邸にマーターポートを持ち込んで撮影し、コンピューター上に生成した3D空間内を移動しながら、360度閲覧できる。赤外線で寸法も同時に測定しているので、縮尺も正確だ。

 これは「3Dウオークスルー」と呼ばれる体験である。4Kで撮影するマーターポートの画質は鮮やかで、細かいところまで建築を堪能できる。

 ARCHI HATCH(東京都世田谷区)を立ち上げたのは、CEO(最高経営責任者)の徳永雄太氏である。東京・品川にある「建築倉庫ミュージアム」の元館長だ。建築業界の人脈を生かし、アーカイブ制作に奔走している。

 有名建築家の建物や歴史的建造物だけでなく、一般の建物も積極的に撮影し、ARCHI HATCHの使い道を提案している。例えば、3Dウオークスルーで建物の中を「散策」しながら、気になった家具や照明など建材をクリックすると説明が出てきて、そのまま購入サイトに飛べるようにする試みである。

建物内の照明をクリックすると、どのメーカーの製品かが分かり、設備選びの参考にしたり、購入できたりする(資料:ARCHI HATCH)
建物内の照明をクリックすると、どのメーカーの製品かが分かり、設備選びの参考にしたり、購入できたりする(資料:ARCHI HATCH)
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 これを応用すると、無店舗のネット通販サイトに3Dウオークスルーを導入することが考えられる。一時的に商品や飾りを撮影可能な場所に並べてマーターポートで撮影し、店舗が打ち出したい世界観を紹介する。商品に近づいて見て、気に入れば、購入ページに飛べるようにする。青空市場やフリーマーケットのような、一時的な路面販売にも適用できそうだ。

 なお、マーターポートの仕様や使い方は、私の体験記を参照してほしい。