NTTドコモが2020年6月以降、建設業界に急接近している。主に建築現場向けのサービスを相次いで投入してきた。
7月14日に竹中工務店と建設DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進で合意したのは、記憶に新しい。業界内で大きな話題になった。
現場における人の生産性向上に主眼を置いたデジタル変革を、両社で一緒に進めるのもユニークだ。デジタル技術を活用した「デジタル朝礼」「デジタルKY(危険予知)」「工程進捗共有」「AI(人工知能)エージェント」「マストタスク管理」「パーソナル(健康)管理」などに、20年度内に順次着手する。
ここ2カ月ほどのドコモの活発な動きには、布石があった。6月30日、ドコモは同社のネットワークと接続したクラウド上の設備を使えるサービス「ドコモオープンイノベーションクラウド」のオプション群を発表。端末とクラウド設備を結び、5G(第5世代移動通信システム)による低遅延で安全性が高い通信を提供する「クラウドダイレクト」を東京都、大阪府、神奈川県、大分県で開始した。
クラウドダイレクトの中身を見てみると、建設業界をターゲットにしたものが多く含まれることが分かる。AR(拡張現実)対応のスマートグラスやVR(仮想現実)ゴーグルを用いた現場作業の支援、建築物の点群データ利用、MR(複合現実)を使った建築鉄骨の検査などである。
ソリューション名 | 概要 | パートナー企業 | 提供開始日 |
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製造機器一括分析ソリューション「FAAP™」 | 工場内の機器から得られる現場データをクラウド上でリアルタイムに収集・AI分析・フィードバックし、故障予知や画像検品自動化による生産性改善を実現 | ブレインズテクノロジー株式会社/株式会社シナプスイノベーション | 2020年6月30日(火曜) |
遠隔作業支援ソリューション「AceReal® for docomo」 | ARスマートグラス、業務支援アプリケーション、サポートサービス、「クラウドダイレクト™」をワンストップで提供し遠隔からの作業支援を実施 | サン電子株式会社 | 2020年7月中旬以降 |
遠隔共同制作ソリューション「Virtual Design Atelier™」 | VRゴーグルとVRコントローラを用いて、3Dデザインの共有や共同制作を遠隔拠点間で実現 | 株式会社ワコム | 2020年6月30日(火曜) |
点群データ活用ソリューション「Field Simulator™」 | 現場をスキャンして取得した大容量の点群データをクラウドで自動的に合成。また、設備の配置・搬入出ルートの検討、遠隔計測など多様なシミュレーションを実現 | 株式会社エリジオン | 2020年6月30日(火曜) |
これらのサービスはいずれも、先述したドコモオープンイノベーションクラウドの基盤上で提供する。
ドコモは8月4日に、XR(VRやAR、MRの総称)を使ったサービスの企画・開発をする新会社「複合現実製作所(東京・港)」も設立している。この会社はパートナー企業である宮村鉄工(高知県香美市)と共同開発している、XRを利用した建築鉄骨業向けの作業支援ソリューション「L'OCZHIT(ロクジット)」の提供を最初に手掛ける。そしてドコモオープンイノベーションクラウドとの連携を視野に入れているという。
建設業界向けサービスのリリースが続く中、私が一番気になったのは点群データの活用サービス「Field Simulator(フィールドシミュレーター)」である。最近、点群の取材が多かった私にとって、通信会社のドコモが点群ビジネスに乗り出したのは少々意外だった。