全3391文字
PR

 3密を避けなければならないコロナ禍で、人とロボットがオフィスで一緒に働く時代が急速に近づいてきたようだ。今回のデジタル活用(デジカツ)は、建物の中をロボットが動き回ることを想定した建築の在り方についての考察である。

 前回このコラムで、東京・竹芝に完成したスマートビル「東京ポートシティ竹芝」のオフィスタワーを紹介した。このビルには大量のセンサーだけでなく、様々なロボットが導入されている。ロボット自体は今では特に珍しいものではないが、ビルの開業がコロナ禍に重なったため、ロボットの本格活用が現実味を帯びてきたと感じた。

 例えば、警備ロボットはカメラを搭載して館内を巡回し、異常を検知するのに使う。大きなビルになればなるほど、警備員の目が行き届かない場所が出てくる。そのたびに要員を増やすのは現実的ではない。ロボットの出番だ。

東京ポートシティ竹芝のオフィスタワーに導入された警備ロボット「SQ-2」(写真:日経クロステック)
東京ポートシティ竹芝のオフィスタワーに導入された警備ロボット「SQ-2」(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 天井や壁などに取り付ける監視カメラと併用し、固定されたカメラではとらえられない場所に警備ロボットが移動して撮影することで死角を減らす。動けることに大きな価値がある。

 オフィスに導入されるロボットの多くは人と同じく、移動できることが前提になる場合が多い。だが既存の建物は、ロボットが動き回ることを想定したつくりにはなっていない。建設会社はこの先、人とロボットが共に移動できるビルをつくっていくことになるのかもしれない。

 そうした検証を新型コロナウイルスの発生前から続けてきた1社が、清水建設である。現在そのミッションを負うグループは、同社の技術研究所の中で「デジタルX」と呼ばれている。

 デジタルXがターゲットにしているのは、清水建設が事業者兼設計・施工者になり、21年秋の開業を目指す東京・豊洲のスマートシティーだ。新たに誕生する街区にオフィス棟とホテル棟を設け、中間に「交通広場」をつくる。その場所を、日本初の都市型道の駅「豊洲MiCHiの駅」にする構想を掲げている。投資は約600億円と巨額で、同社単独の開発プロジェクトとしては最大規模である。

清水建設が21年秋の開業を計画する「豊洲6丁目4-2・3街区プロジェクト(仮称)」。オフィス棟とホテル棟から成り、中間に都市型道の駅「豊洲MiCHiの駅」(赤い丸の部分)を整備する。この画面では2つの建物を、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)データを使って正確に描写している(資料:清水建設)
清水建設が21年秋の開業を計画する「豊洲6丁目4-2・3街区プロジェクト(仮称)」。オフィス棟とホテル棟から成り、中間に都市型道の駅「豊洲MiCHiの駅」(赤い丸の部分)を整備する。この画面では2つの建物を、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)データを使って正確に描写している(資料:清水建設)
[画像のクリックで拡大表示]

 豊洲MiCHiの駅は、近未来の交通結節点には欠かせなくなる機能を最初に実装する場になっていく。多様な移動手段が交差し、いち早く移動型ロボットや自動運転車も投入されると清水建設は見ている。デジタルXの主な研究領域は、まさにここだ。

「豊洲MiCHiの駅」のデッキを通り、ホテル棟からオフィス棟に抜けるイメージ図(資料:清水建設)
「豊洲MiCHiの駅」のデッキを通り、ホテル棟からオフィス棟に抜けるイメージ図(資料:清水建設)
[画像のクリックで拡大表示]

 先述の竹芝と豊洲、さらに大丸有(大手町・丸の内・有楽町)の3カ所は、20年7月に都から「スマート東京」のモデル街に選ばれた。コロナ禍に選出された3つの街は、感染症対策を盛り込んだスマートシティーを追求していくことになる。ロボット導入という選択肢は確実に入ってくる。

 では、移動できるロボットにとって、必要不可欠なものとは何だろうか。2足または4足の歩行ロボットもあるが、主流は車輪だろう。すると建築的には、フラットで幅が広い通路を設けなければならない。

 ただし、それだけではフロア間の移動ができない。ロボットが人と一緒に「エレベーターを乗り降り」できないと困る。ロボットの大きさにもよるが、ある程度大きな「箱」のエレベーターが必要になるし、行き先を指定する手段も要る。以前から、ロボット導入の障壁の1つになっていた課題だ。

 笑い話のようだが、エレベーターに乗ったときだけ、ロボットの本体から腕のようなものが伸びてきて階数ボタンを押す、なんてことをイメージするのは楽しい。しかし、現実にはまずあり得ない。

 ロボットとエレベーターが無線通信で「会話」して、行き先のフロアまで連れて行ってくれるようにしたい。それにはロボットとエレベーターを開発している各メーカーの連携が欠かせない。冒頭で紹介した竹芝のスマートビルでは、エレベーターメーカーである三菱電機が提供する連携システムを使い、警備ロボットの上下階移動を可能にしている。

 それでは清水建設のデジタルXは、建設会社としてこの課題にどう向き合っているのか。私は研究所を訪れてみることにした。