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 森ビルが東京都港区で進めている巨大な再開発事業「虎ノ門・麻布台プロジェクト」の建設現場に、私はついに足を踏み入れることができた。高さが約330mのメインタワーが立つ「A街区新築工事」の施工を手掛ける清水建設から、現場のデジタル活用(デジカツ)に限った取材ならとの条件付きで立ち入りを許された。

 2022年11月初旬、メインタワーの建設が進む工事現場の入り口で清水建設の広報担当者と待ち合わせをした。メインタワーは22年4月に上棟し、同年11月時点ではガラスのカーテンウオールで覆われた外観がほぼ出来上がっていた。真下から見上げるメインタワーはとにかく高く、迫力がある。

高さが約330mあるメインタワーを足元の地上から見上げた様子。曲線が多用されている。外装デザイナーは米ペリ クラーク アンド パートナーズ (Pelli Clarke & Partners)(写真:日経クロステック)
高さが約330mあるメインタワーを足元の地上から見上げた様子。曲線が多用されている。外装デザイナーは米ペリ クラーク アンド パートナーズ (Pelli Clarke & Partners)(写真:日経クロステック)
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 メインタワーは地下5階・地上64階建てで、完成すると日本一の高さになる。竣工は23年中を予定している。最上層(54~64階)は、全91戸の高級住宅「アマンレジデンス 東京」になる。すぐそばに立つ高さ333mの東京タワーのてっぺんが、窓からほぼ真横に見えるという。

2022年10月時点の進捗状況(写真:清水建設)
2022年10月時点の進捗状況(写真:清水建設)
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 建設現場の内部は、迷宮のようだ。すぐに迷子になりそうである。1階からエレベーターで少し上ると、最初の驚きが待っていた。清水建設の従業員をはじめ、関係者がパソコンに向かって黙々と働く仮設のオフィスフロアに出た。この部屋だけ見ると、工事現場の中にいるとは思えない。大企業のオフィスそのものである。

 そして大きな部屋に通された。今回の目的地の1つである「Smart Control Center(SCC、スマートコントロールセンター)」だ。日本一の高さになるビルの建設現場は、日本最大級の広さがあると言ってよい。延べ面積は約46万m2とけた違いで、オフィスの他に住宅や商業施設、学校、医療センターまで入る。多い日にはこの現場で約5000人が働いていたというから驚く。

メインタワーの内部にある「Smart Control Center」。写真の人は、清水建設東京支店虎ノ門麻布台再開発A街区建設所の井上愼介建設所長(写真:日経クロステック)
メインタワーの内部にある「Smart Control Center」。写真の人は、清水建設東京支店虎ノ門麻布台再開発A街区建設所の井上愼介建設所長(写真:日経クロステック)
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 SCCは広大な建設現場を集中管理する中枢拠点である。湾曲した有機ELディスプレーが半円を描くように、部屋の壁にほぼ180度取り付けられている。SCCに似た部屋を私はこれまで数多く取材してきたが、大きさはトップクラスだろう。

ディスプレーの大きさは、私が過去に見てきた建設現場や作業所のものとしてはトップクラスだ(写真:日経クロステック)
ディスプレーの大きさは、私が過去に見てきた建設現場や作業所のものとしてはトップクラスだ(写真:日経クロステック)
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 私を出迎えてくれたのは、清水建設東京支店虎ノ門麻布台再開発A街区建設所の井上愼介建設所長である。早速ディスプレーを間近で見ながら説明を受けた。

 私が一番気になったのは、建物の構造図とともに表示されている仮設エレベーターの稼働画面だ。メインタワーには作業者や資材を運ぶための大型の仮設エレベーターが6台ある。

エレベーターの稼働状況を把握できる(写真:日経クロステック)
エレベーターの稼働状況を把握できる(写真:日経クロステック)
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 仮設エレベーターの動きを見える化した画面を目撃したのは、初めてかもしれない。少なくともSCCのような部屋の中心に、エレベーター画面を映し出しているケースは初めてだ。

 井上建設所長は、「始めたばかりの取り組みが多いが、日本最大級といえる現場では、最新のデジタル施工を何でも試してやろうという気持ちでいる」と打ち明ける。

 今は6台のエレベーターが1日に何回往復し、作業者と資材をどれだけ上げ下げしたかを見える化しているだけ。「トラックの積載効率と同じで、この動きを見ていれば空きがあるエレベーターが分かる。もっと効率よく、人と物を運ぶ改善の余地がある。無駄なエレベーター待ちはなくしたい」

 だがそれも最初の一歩にすぎない。本当にやりたいのは、「エレベーターに載った資材の動きから、出来高管理につなげることだ」(井上建設所長)。

 エレベーターの監視画面の左には、タワークレーンの監視画面がある。この日は2台のクレーンが動いていた。クレーン先端部の動きから出来高を管理する手法が既に登場しており、清水建設もいずれ取り入れるかもしれない。

 日本一の高さになるメインタワーは使用する鉄骨などの物量がとにかく多い。しかも曲線が多いデザインを採用しており、施工の難易度が非常に高いという。そうした中、現場の生産性も高めなければならない。

 井上建設所長が普段よく見ているのは、ディスプレー右手に集められた現場各所のカメラ映像である。屋上の映像を指さしながら、「64階まで上って屋上に出るのにかかる時間と労力は相当なもの。現在はちょうど屋上付近の工事を進めているので、タワークレーンに付けたカメラでリアルタイムの映像を時々確認している」という。

SCCで屋上のリアルタイム映像を見る(写真:日経クロステック)
SCCで屋上のリアルタイム映像を見る(写真:日経クロステック)
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