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道路の冠水をAIで予測する試みも同時進行中

 ウェザーニューズとトヨタは19年10月に、コネクティッドカーから得られるクルマのデータを用いた、道路の冠水箇所のAI(人工知能)予測の実験も東名阪で開始している。

 両社は19年夏に、コネクティッドカーのデータと気象データをコンピューターに学習させ、冠水のリアルタイム検知を可能にするAIのアルゴリズムを開発した。18年8月に都内で発生したゲリラ豪雨のデータを使って検証し、トヨタ車が通った道路で、クルマの故障や立ち往生につながる深さの冠水箇所の推測に成功している。

 ワイパーによる雨の観測と同様に、トヨタのコネクティッドカーからアクセルや車速のデータを収集。「この強さでのアクセルの踏み込みで、この程度しか車速が出ていないということは、道路に何らかの抵抗があると考えられる。それが冠水によるものかどうかを判別できるように、冠水のパターンをコンピューターに学習させて、推測や検知につなげている」(トヨタの河合英紀先進技術統括部AI統括室グループ長)。

 トヨタは冠水の実地試験に先立ち、自社の試験場を水で浸し、冠水した道路(一般には道路の縁石の高さを上回るような15cm以上の冠水)をクルマが走ると、水の抵抗でどの程度スピードが減速してしまうのかというデータを大量に集めた。そのデータで学習したパターンの中から、冠水特有の兆候を突き止めた。

 これからは実際の道路を走るトヨタのコネクティッドカーからデータを取り、いち早く冠水を見つけ出そうとしている。街中の道路が冠水するような緊急事態でなくても、「谷状になっている道路の底の部分や陥没した場所に水がたまり、クルマの走行に支障を来す場所は、日本全国に無数にある。報道もされない地元の冠水場所などをコネクティッドカーの走行で細かく特定できれば、地域の事故軽減に役立つと見ている」(河合グループ長)。

 なお、台風15号と19号のデータ解析はこれからなので、ここでは18年8月27日に降った雨で道路の冠水が推定された箇所を、今回の台風19号で大きな水害に見舞われた東京・世田谷エリアの南部を中心に絞り込んで、抜き出してもらった。

 青色の点が冠水推定箇所を表している。青い点を押すと、この地点の降水量の推移を示した棒グラフと、冠水を検知した時間帯(クルマのマーク)が分かる。さらにカメラのマークをクリックすれば、地域の人から提供された「ウェザーリポート」を写真入りで読める。

18年8月27日に東京・世田谷の南部付近で、大雨による道路の一部冠水が推定された様子。青色の点が冠水箇所を示す(資料:ウェザーニューズ)
18年8月27日に東京・世田谷の南部付近で、大雨による道路の一部冠水が推定された様子。青色の点が冠水箇所を示す(資料:ウェザーニューズ)
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青い点を押すと、その地点の降水量の推移を棒グラフで確認できる(資料:ウェザーニューズ)
青い点を押すと、その地点の降水量の推移を棒グラフで確認できる(資料:ウェザーニューズ)
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カメラマークを押すと、地域の人から提供された「ウェザーリポート」を写真入りで読める(資料:ウェザーニューズ)
カメラマークを押すと、地域の人から提供された「ウェザーリポート」を写真入りで読める(資料:ウェザーニューズ)
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 こうした1年以上の検証を踏まえて、19年10月に道路冠水のリアルタイム検知地域を東名阪に拡大して、発表に至った。

台風19号の大雨のさなかに、冠水した道路を走るクルマの様子。写真はイメージを示すためのもので、クルマはトヨタのコネクティッドカーではない(写真:ウェザーニューズ)
台風19号の大雨のさなかに、冠水した道路を走るクルマの様子。写真はイメージを示すためのもので、クルマはトヨタのコネクティッドカーではない(写真:ウェザーニューズ)
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 台風19号は、大雨や河川の氾濫による冠水が今後大きな社会問題になることを指し示した。道路を埋め尽くすような大規模な冠水に陥る前に、道路の所々で発生し始めた冠水をいち早くAIで推測・検知できれば、ドライバーの安全確保や、避難にクルマを利用する際のルート決定などに有効に使える。場所によっては、大雨がやんだ後も冠水が残るので、冠水位置のリアルタイム検知は重要だ。

 クルマという「動くセンサー」が異常気象に立ち向かう最強ツールになる日は、すぐそこまで来ている。