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 今回のデジタル活用(デジカツ)の舞台は、湾岸エリアに立つ高級賃貸マンションの屋上だ。てっぺんの「クラウン(王冠)」部分が1カ所反り上がった、特徴的な外観デザインを採用している。

東京・竹芝に立つ高級賃貸マンション。赤い丸印を付けた、屋上のとがったクラウン(王冠)部分に注目(写真:日経クロステック)
東京・竹芝に立つ高級賃貸マンション。赤い丸印を付けた、屋上のとがったクラウン(王冠)部分に注目(写真:日経クロステック)
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 この建物は、2020年6月30日に誕生した新街区「東京ポートシティ竹芝」の一角を占めるレジデンスタワー(B街区)である。同タワーは地上18階建てで、高さは約60m。外観デザインは、東京湾に接する竹芝ふ頭と、羽田空港にモノレールでつながる東京・竹芝の立地にちなみ、空にたなびく「帆」の形をモチーフにしている。

 建物のデザインを監修したのは、ホシノアーキテクツ(東京・港)代表取締役の星野裕明氏だ。

20年6月に竣工した、東京ポートシティ竹芝のレジデンスタワーにおける夜の様子。「帆」をモチーフにした外観デザインがライトアップで際立つ(写真:東急不動産、鹿島)
20年6月に竣工した、東京ポートシティ竹芝のレジデンスタワーにおける夜の様子。「帆」をモチーフにした外観デザインがライトアップで際立つ(写真:東急不動産、鹿島)
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 単純な直方体の建物ではなく、屋上の庇(ひさし)の一角が空に向かって突き出た鋭いデザインが、周辺に立つ建物との違いを際立たせている。さらに、外壁のコーナーに張った「ハニカムパネル」が、屋上のクラウンまで連続するように見せている。

 施工中、建設現場ではクラウン部分を「屋上アルミ庇」と呼んでいたという。以下、そう呼ぶことにする。

 私は今回アルミ庇を取材するため、特別に屋上に上らせてもらった。そしてアルミ庇の仕上がりを間近で見てきた。

特別にレジデンスタワーの屋上に入れてもらった。右は、長谷工コーポレーションの原英文建設BIM推進部・DX推進部統括部長(写真:日経クロステック)
特別にレジデンスタワーの屋上に入れてもらった。右は、長谷工コーポレーションの原英文建設BIM推進部・DX推進部統括部長(写真:日経クロステック)
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 屋上アルミ庇も外壁コーナーも、複数のパネルを張り合わせて表面を仕上げているのが見て取れる。

屋上アルミ庇と外壁コーナーの仕上げイメージ。青色の部分が連続しているように見せている(資料:長谷工コーポレーション)
屋上アルミ庇と外壁コーナーの仕上げイメージ。青色の部分が連続しているように見せている(資料:長谷工コーポレーション)
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 このとがった外観を施工するのは、簡単ではない。特にパネルの表面仕上げには工夫が要る。

 短期間で正確に仕上げるうえで大いに役立ったのが、施工BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)である。「BIMデータから製作図を作成した」。レジデンスタワーの設計、および、施工にも関わった長谷工コーポレーションの原英文建設BIM推進部・DX推進部統括部長は、そう振り返る。

屋上全景のBIMモデル1(資料:長谷工コーポレーション)
屋上全景のBIMモデル1(資料:長谷工コーポレーション)
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屋上アルミ庇の断面図(資料:長谷工コーポレーション)
屋上アルミ庇の断面図(資料:長谷工コーポレーション)
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 パネルの分割もBIMモデル上で実施した。アルミ庇の表面は464枚、コーナーは39枚のパネルで構成している。パネルの割り付けや目地幅、納まりなどは、デザイン監修した星野氏が全てチェック。ハニカムパネルはモックアップでも確認した。

 パネルは工場で製作し、分割した状態で建設現場に納品する。職人は指定の位置にパネルを張るだけでよい。だから現場での取り付け作業は「問題なく、ピッタリと一発で施工できた」(原統括部長)。