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 横浜高速鉄道のみなとみらい線、横浜駅とみなとみらい駅の間にある「新高島駅」付近には最近、ビルが林立し始めている。数年前までは原っぱのようだった土地が、オフィスビルで埋め尽くされようとしている。その1つに、2019年4月に稼働した資生堂の新しい研究開発拠点「資生堂グローバルイノベーションセンター(通称S/PARK)」がある。

横浜みなとみらい21地区に2019年4月に完成した、資生堂の新しい研究開発拠点「資生堂グローバルイノベーションセンター(通称S/PARK)」(写真:資生堂)
横浜みなとみらい21地区に2019年4月に完成した、資生堂の新しい研究開発拠点「資生堂グローバルイノベーションセンター(通称S/PARK)」(写真:資生堂)
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 郊外型の低層で横長な研究所とは違い、都心の施設は縦長になることがほとんどだ。S/PARKも地下1階・地上16階建て、高さが76.91mの高層ビルである。見た目はオフィスビルそのもの。鉄骨(S)造と一部鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造で、延べ面積は5万6181.26m2。投資額が400億円を超える大型研究施設だ。

 化粧品や日用品を開発する資生堂は、消費者により近い場所で研究開発する道を選んだ。これまで中心部から少し離れた横浜市都筑区にあった施設から、西区の横浜みなとみらい21地区に思い切って場所を移した。

 建物のコンセプトは「交流」。異なる分野の研究員同士の出会いを促し、お互いに刺激し合う。しかも通常は機密を守るため閉ざされた場所になるはずの研究所の低層階を開放。消費者との交わりまで意識したつくりにしている。

 新しいタイプの研究施設であることが評価され、19年9月には日本経済新聞社と一般社団法人ニューオフィス推進協会が共催する「日経ニューオフィス賞」で、経済産業大臣賞に選ばれた。

 その裏側には、設計・施工を担当した鹿島の働きがあった。研究員の交流というコンセプトは明快だが、縦積みのビルでどうすれば上下階の移動や人気(ひとけ)をうまくつくり出せるのか。鹿島の腕の見せどころだった。

 ポイントはいくつかあるが、ここではデジタル活用(デジカツ)の視点で、設備設計を中心とした施工BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)に焦点を当て、知られざる舞台裏に迫る。

鹿島がS/PARKの施工で利用した、設備設計のBIM画面例(写真:鹿島)
鹿島がS/PARKの施工で利用した、設備設計のBIM画面例(写真:鹿島)
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 私にとって幸運だったのは、施工のリーダーを務めた鹿島の杉本健太郎所長(当時、現在は別のプロジェクトの所長)が現在も、横浜みなとみらい21地区で別のプロジェクトの所長をしていることだった。何と仮設の作業所はS/PARKのときと同じで、今も杉本所長はそこにいるという。所長はプロジェクトが変われば、作業所を移っていく。同じ作業所で別の案件を引き続き指揮するのは珍しいケースだ。

 S/PARKは作業所のすぐ近く。そこで19年12月初旬に、作業所を訪れることにした。今は別のプロジェクトを先導している杉本所長だが、S/PARKの施工資料を用意してもらい、非常に生々しい話を実際の現場で聞くことができた。