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 ANAグループ、スタートアップ企業のALE、三菱重工業と、分野も規模も全く異なる3つの企業。各社は、それぞれの思いを胸に宇宙ビジネスの展開を目指している。それぞれの宇宙ビジネスに、国際宇宙ステーション(ISS)や「きぼう」は、どのように役立つのか。日本の技術や文化は生かせるのか。宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事・有人宇宙技術部門長で、宇宙飛行士の若田光一氏が、それぞれの企業の担当者との対談から探る。(対談相手は、ANAホールディングスのデジタル・デザイン・ラボ兼宇宙事業化プロジェクトメンバーである松本紋子氏、ALEの岡島礼奈社長、小笠原 宏・三菱重工業宇宙事業部副事業部長)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事・有人宇宙技術部門長で、宇宙飛行士の若田光一氏(写真右から2人め)が「きぼう」をテーマに対談
宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事・有人宇宙技術部門長で、宇宙飛行士の若田光一氏(写真右から2人め)が「きぼう」をテーマに対談
撮影:黒田 菜月

宇宙ビジネスを展開するにあたってISSや「きぼう」はどう活用できるのか

若田 現在、国際パートナー間の取り決めで、国際宇宙ステーション(ISS)を2024年まで運用することは合意されています。ISSには、参加各国がこれまで膨大なコストと技術力を投入し、利用成果創出のための安定した宇宙実験施設として稼働しています。そのまま役割を終えてしまうのは、あまりにももったいない。2025年以降もISS利用を継続していくことを想定した場合のISSの活用の仕方について、皆さんからご意見やアイデアをいただけますでしょうか。

松本 宇宙へ旅行する場合、ある程度の期間を過ごすなら、滞在場所が必要になります。米国のスタートアップ企業が将来的に宇宙ホテルを作るといっていますが、いつできるか分かりません。それなら、既にあるISSを有効活用する方法もあるんじゃないかと思います。

 地球から遠く離れた深宇宙を探査する場合にも活用できるでしょう。探査に持っていく設備などは、一度、宇宙空間で実証したいケースがあるはずです。そのための環境として、ISSは非常に価値あるものになると思っています。

岡島 ALEの立場から考えると、人工流れ星用の人工衛星を再利用する際に使えそうです。再利用では、人工衛星を宇宙で回収して、燃料を詰め替えてまた放出するといった作業が発生します。その燃料詰め替えなどの場所としてのISSには非常に興味があります。

小笠原 ISSを宇宙旅行の目的地とすることも、意味があるんじゃないでしょうか。よく見かける「そうだ 京都、行こう。」というテレビコマーシャルのように、「そうだ、“きぼう”に行こう」などと言われるようになればいいと期待しています。

 また、とても大きい地球の重力を振り払い、遠心力で釣り合っているISSを地上に落としてしまうのは、エネルギー的にも大きな損失になります。何とか軌道上に置いておき、太陽エネルギーを有効に活用する方法を考えた方がいいでしょう。例えば地上から持って上がった水を、太陽エネルギーを使って電気分解して酸素と水素にする。そこで作られた水素を、ロケットの水素燃料ステーションとして活用することも原理的には可能です。

ANAホールディングスのデジタル・デザイン・ラボ兼宇宙事業化プロジェクトメンバーである松本紋子氏
ANAホールディングスのデジタル・デザイン・ラボ兼宇宙事業化プロジェクトメンバーである松本紋子氏
撮影:黒田 菜月

これから宇宙ビジネスに進出しようとする企業へのメッセージ

若田 これから宇宙ビジネスに進出しようとしている、民間企業や後輩企業などへのメッセージや呼びかけをお願いします。

小笠原 宇宙ビジネスに関わる新しいアイデアやニーズなどの情報を、積極的に発信してもらいたいですね。技術的なことは、これまで宇宙開発に取り組んできた「エスタブリッシュドスペース」のスタッフに相談すれば、答えてくれます。

岡島 私たち自身が後輩企業なので、エスタブリッシュドスペースの方々との交流をもっと深めたいと思っています。現在は大企業からの出向も受け入れているので、人材の交換留学のような仕組みがあるとすてきだと思います。

 以前、米国で開かれた宇宙系サミットのパネルディスカッションに、パネリストとして参加したのですが、メジャーリーグに草野球の球団が加わったような扱いでした。米国では既にSpaceXやOneWebなどの民間企業がすごい勢いで市場を作っています。これに対して日本では宇宙ビジネスは存在感が低い。これだけの技術を持っているのに、残念です。これから、宇宙ビジネスは本当に面白くなっていくので、ぜひ、皆さんに入ってきてほしいです。

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