
みずほ銀行がまたしても、世の中の「期待」を裏切った。といってもシステム障害を再発させたわけではない。勘定系システムの完全統合と再構築を成功させた。「失敗するだろう」「またトラブルを起こすのでは」という雑音をはねのけた格好だ。プロジェクトは本当に完了したのか、結局いくらかかったのか、今回はなぜ完遂できたのか―。みずほの「過去」を知るIT関係者なら、こうした疑問を浮かべて当然だ。みずほ銀行のシステム動向を20年にわたり追いかけてきた日経コンピュータが、総力取材によって謎を解き明かす。
みずほ銀行がまたしても、世の中の「期待」を裏切った。といってもシステム障害を再発させたわけではない。勘定系システムの完全統合と再構築を成功させた。「失敗するだろう」「またトラブルを起こすのでは」という雑音をはねのけた格好だ。プロジェクトは本当に完了したのか、結局いくらかかったのか、今回はなぜ完遂できたのか―。みずほの「過去」を知るIT関係者なら、こうした疑問を浮かべて当然だ。みずほ銀行のシステム動向を20年にわたり追いかけてきた日経コンピュータが、総力取材によって謎を解き明かす。
出典:日経コンピュータ、2019年9月5日号 pp.26-57 みずほ3度目の正直
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「人が育った」。みずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長はシステム完全統合プロジェクトの成果についてこう述べた。取材に応じたみずほ幹部、現場のシステム担当者、プロジェクトを支えたITベンダーの幹部も同じ話をしていたのが印象的だ。
自身の進退を賭けて指揮を執り、みずほ最大の経営課題を解決した。経営トップとしてプロジェクトにどう関与し、開発現場をどう支えたのか。苦節20年、みずほの社長が初めて日経コンピュータの単独取材に応じた。
みずほフィナンシャルグループ(FG)の経費率は2019年3月期で79%と、三井住友フィナンシャルグループの60%、三菱UFJフィナンシャル・グループの71%と比べて高い。今後は新システム「MINORI」を活用することでIT・事務コストの削減を目指す。2023年度までの5カ年計画で経費率を現在よりも…
みずほフィナンシャルグループ(FG)は新システム「MINORI」の導入によって、今後アプリケーションを開発するコストを3割程度削減できると見込んでいる。
みずほ銀行の新勘定系システム「MINORI」が稼働することで、営業店は大きく姿を変えることになる。利用者が紙の伝票(依頼書)を書く机や、伝票を従業員が受け取るハイカウンター、その後ろで営業店端末を操作する事務系職員が店舗から姿を消していく。営業店は従来の事務拠点から、本当の意味での営業拠点へと変わ…
新システム「MINORI」への移行に伴い営業店の事務手続きは大きく変わった。移行初日から業務をスムーズに回すために、入念な準備が欠かせなかった。みずほフィナンシャルグループ(FG)は約1万7000人の事務担当者などに座学の研修を受けさせたうえで、約400ある全店でそれぞれ6回にわたるリハーサルを展…
システムの品質をいくら高めても移行でミスが出れば、それまでの苦労は水の泡だ。トラブルなく新システム「MINORI」の全面稼働にたどり着けた裏には移行作業の進捗を管理・共有できる仕組みを整えていたことがある。事前の入念な訓練も奏功した。
新システム「MINORI」へのシステム移行に際して、週末にATMなどを停止させた回数は計9回。移行に要した期間は丸1年に及んだ。何回にも分けて移行することで、万が一トラブルが起こった際の影響範囲を小さく抑える狙いだった。
世界最大級のシステム構築プロジェクトだけに、システム開発の実務を取り仕切ったみずほ情報総研(IR)は開発拠点の確保に苦労した。拠点を集約すれば効率は高まるが、オフィスの広さや賃料などがネックになり、複数に分散せざるを得なかった。
新システム「MINORI」の開発プロジェクトを進めるなかで、みずほフィナンシャルグループ(FG)は開発完了時期を2回延期している。1度目と2度目でそれぞれ事情は異なる。
ピーク時で約8000人が関わった世界最大級のシステム開発案件だけに、みずほフィナンシャルグループ(FG)はプロジェクト管理に特に気を配った。傘下の銀行やシステム開発会社に横ぐしを刺す横断組織を設け、会社や部門間の利害対立を調整し、全体最適の視点で意思決定を下した。
新システムの「MINORI」は完全な新規開発だ。旧みずほ銀行(BK)の旧勘定系である「STEPS」や旧みずほコーポレート銀行(CB)の「C-base」、みずほ信託銀行(TB)の「BEST」からはコードを一切引き継いでいない。
新システム「MINORI」の開発に参加したITベンダーの数は、前代未聞の規模に膨れ上がった。取りまとめ役であるみずほ情報総研(IR)の1次委託先だけで70~80社。2次委託先、3次委託先を合わせると約1000社に上る。総務省の調査によると情報通信業を手掛ける企業数は5474社で、子会社や関連会社を…
みずほフィナンシャルグループ(FG)は新システム「MINORI」の構築に当たって「基本的にオープン技術を採用した」(みずほ銀行の間仁田幹央IT・システム統括第一部次長)。多くの業務アプリケーションがLinux/UNIXサーバーで稼働している。ただし大規模な処理能力と高い信頼性が求められる領域だけは…
みずほ銀行は2002年4月と2011年3月に起こした2度の大規模システム障害で、合計350万件を超える振込遅延と数万件の二重引き落としを発生させた。新システムである「MINORI」への移行後はこうした大トラブルは減る見込みだ。トラブルの原因となった大量バッチ処理を解体したからだ。
みずほ銀行は新勘定系システムである「MINORI」にSOA(サービス指向アーキテクチャー)を採用した。アプリケーションをコンポーネント化(部品化)することでシステム変更の柔軟性を保ち、保守性を高める狙いだ。同行は今後のアプリケーション開発にかかる期間を約3割短くできると見込む。
旧第一勧業銀行、旧富士銀行、旧日本興業銀行の3行が経営統合を発表したのは1999年8月のこと。旧3行は当時から老朽化していた勘定系を早期に全面刷新する計画だった。しかし全面刷新には2度挫折。3度目の正直として2011年に新システム「MINORI」の開発を本格化し、構想から20年後の2019年7月に…
みずほフィナンシャルグループ(FG)のシステム刷新プロジェクトを、口の悪いIT業界関係者はなかなか完成しないスペイン・バルセロナの教会にちなんで「IT業界のサグラダ・ファミリア」とやゆした。2011年6月に本格化したプロジェクトが、「そもそも何をやっていた?」と疑問が出るほど長引いたのは、銀行シス…
みずほフィナンシャルグループ(FG)は新勘定系システムである「MINORI」の構築にいくら投じたのか。2011年にプロジェクトを始めてからの投資額をみずほFGは「4000億円台半ば」としている。東京スカイツリーの建設費7本分に相当する。