新システム「MINORI」への移行に伴い営業店の事務手続きは大きく変わった。移行初日から業務をスムーズに回すために、入念な準備が欠かせなかった。みずほフィナンシャルグループ(FG)は約1万7000人の事務担当者などに座学の研修を受けさせたうえで、約400ある全店でそれぞれ6回にわたるリハーサルを展開し、万全を期した。
営業店の窓口で端末を操作しながら接客する担当者などを対象に研修を始めたのが、総合テストの真っ只中にあった2016年11月だ。安全に移行するため、研修とリハーサルに十分な期間を割いた。
2017年末までの1年ほどで延べ1万7000人が研修を受講した。次期システムの研修を手掛けた事務サービス推進部は通常、新入社員など約800人に対して1年がかりで研修を施す。「今回はいつもの20倍以上の人たちに同じ期間で研修をやらなければいけなかった」(みずほ銀行の島谷力哉事務サービス推進部部長)。
廃止した店舗を再利用
1万7000人を相手にするのだから研修場所や講師の確保は大変だった。全都道府県に支店があるみずほ銀行だけに、全国14カ所に研修所を設置した。首都圏と大阪で計7カ所、ほかに札幌、仙台、富山、名古屋、広島、高松、福岡にそれぞれ1カ所ずつ置いた。コストを抑えるため、廃止した店舗の内装を整備し、再利用したケースもある。
講師は補助者も入れると約170人を確保した。講師を務めたのは、主に営業店で働く特定職(一般職)の女性だ。彼女らが事務サービス推進部に異動し、MINORIの講師になったケースが9割を占めた。通常の異動のほか、専門の公募制度も設け、希望者を募った。
自ら志願して講師になったみずほ銀行の海津幸子調査役は「これまでは支店で本部からの指示を受けることが多かった。今回は自分が作り手になり、社内に幅広く発信できるチャンスだと思った」と語る。自ら手を挙げて講師になった人は約40人に上った。
とはいえ講師陣も最初から新仕様に習熟していたわけではない。まず講師がMINORIに詳しくなるために、チーム内で勉強会を繰り返したり、役員などを前に公開型でリハーサルを開いたりして本番に備えた。
「これだけ注目されているプロジェクトで、しかもまだ稼働していないシステムを勉強して、営業店のメンバーに教えるのはかなりのプレッシャーになる」(島谷部長)。事務サービス推進部内に相談窓口を設けて、講師として独り立ちできるようにサポートした。