自身の進退を賭けて指揮を執り、みずほ最大の経営課題を解決した。経営トップとしてプロジェクトにどう関与し、開発現場をどう支えたのか。苦節20年、みずほの社長が初めて日経コンピュータの単独取材に応じた。
(聞き手=大和田 尚孝)
システム統合がようやく終わりました。社長として率直にどんな気持ちですか。
絶対に失敗できないプロジェクトでしたから、本当にうれしかったです。万全を期すために、ATMやインターネットバンキングなどのオンラインサービスを9回停止し、お客様に大変なご迷惑をお掛けしました。まずは(協力に)心から感謝申し上げます。
2011年3月に大きなシステム障害を起こし、信頼回復に向けて、勘定系システムの全面再構築を決めました。足かけ8年のプロジェクトのバトンを受け継いだ者として、関係者への感謝や敬意の気持ちも大きいです。
新システムの全面稼働はみずほにとってどんな意味を持ちますか。
この4月から5カ年の新たな中期経営計画を始めました。通常の中計は3年ですがあえて5年としました。少子高齢化やデジタル化など世の中の構造変化が進むなかで、金融そのものの在り方を根っこから転換するためには、それくらいの期間が必要になると考えたからです。
中計で掲げたのが「次世代金融への転換」です。新勘定系システムの「MINORI」は大きな足掛かりになります。システムを構成するコンポーネント同士を疎結合にして外部のシステムと接続しやすくしており、事業展開の可能性が飛躍的に広がります。
今後はMINORIを生かし、様々なFinTech事業者と連携していきます。私は「競争と協調」と言っています。コアの部分は自前でやる一方、それ以外の領域はオープンAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)経由で外部の力を借ります。
店舗ネットワークや事務プロセスも大きく変えます。事務を集約したり定型作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入したりして効率を高め、店舗の担当者はコンサルティングなど人でないとできない業務に集中させます。
勘定系の完全統合によるITコストの削減効果をどうみますか。
開発コストを3割ほど減らせるとみています。浮いた分をデジタル化など攻めの分野に投じていきます。