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 2019年12月16日、輸出管理を巡る日韓政策対話が3年半ぶりに開催された。政策対話は10時間に及んだ。だが、日本経済新聞によれば、同月17日午前に韓国産業通商資源部(部は省に相当)が発表した開催結果は次の通りだ(関連記事)。

「両国は輸出管理制度運用に関して専門的観点から相互理解を促進できた」
「両国は現在国際的安保環境の元で今後もそれぞれ責任と裁量の元で実効性のある輸出管理を推進する必要があるという認識を共有した」
「両国の輸出管理制度と運用に対して多様な改善情報をアップデートすることを含め、今後も懸案解決に寄与できる輸出管理政策対話と意思疎通を継続して行うことに合意した」

 日韓の関係を改善する糸口が見つかるかもしれないと期待されたが、政策対話の結論は「今後も話し合いを続ける」というものだった。

 韓国メディアの報道をみると、何よりも「経済産業省が今回はちゃんとした会議室を用意した」ということを大々的に報じていた。「2019年7月に行われた輸出管理に関する事務的説明会は荷物が置かれた倉庫のような部屋で行われ、経済産業省の担当者は韓国産業通商資源部の担当者が部屋に入っても立ち上がらず、挨拶もしなかった。今回は正常な会議室で開催されて飲み物もあった。日本側の雰囲気が変わった」という内容だった。日本に「おもてなし」があるように韓国では「儀典」を重視する。これは国家行事や国際会議のように公式な場で守るべき礼儀のことで、外交部(日本の外務省に相当)のホームページで詳細に紹介している。前回の説明会では経済産業省が儀典を守らなかったと韓国メディアが問題視したこともあり、今回も対話の中身はもちろんだが会議場や参加者の行動にまで注目を集めたようだ。

 同年12月になってからは、韓国経済の2020年を展望するセミナーや特集記事が増えている。その中では、日本の輸出管理よりも米中貿易摩擦の方が韓国に与える負の影響が大きい、という分析が多かった。

 同月16日に韓国関税庁が発表した貿易統計によると、2019年の貿易額は1兆米ドルを突破した。1兆米ドルを超えるのは2017年以降3年連続だ。ただし、同庁は2019年は各国で保護貿易主義が強まったことや世界的な不況、日本の輸出管理による混乱が生じたにもかかわらず1兆米ドルを超えられたことに意味があると分析した。同月13日に米中貿易協議が第1段階の合意に達したことで投資家心理の回復が見込まれることに加え、2020年には半導体メモリーの価格上昇と5G(第5世代移動通信システム)投資の拡大、5G加入者の増加による半導体需要の拡大、米国・EU(欧州連合)・日中以外のアジア諸国への輸出拡大などを背景に、景気回復について前向きに評価する証券会社が多かった。

 一方で、米中貿易摩擦によって成長した分野もあった。米国と日本がセキュリティー上の問題から中国勢のネットワーク設備を導入しない方針を決めた結果、韓国サムスン電子(Samsung Electronics)が5G設備の市場シェアを大幅に伸ばし、世界第2位になった。

 同社のネットワーク事業部の売上高は2018年の4兆1000億ウォン(約3855億円)から2019年には6兆2500億ウォン(推定、約5876億円)に急上昇し、ネットワーク設備の世界市場シェアは2018年末の約5%から2019年9月時点で約11%に伸長している。英国の調査会社IHS マークイット(IHS Markit)の調査によれば、5Gネットワーク設備だけに限ると2019年9月時点で約23%で、中国華為技術(ファーウェイ、Huawei Technologies)の約30%に続く2位になった。サムスン電子は、韓国で世界初となるスマートフォン(スマホ)向け5Gサービス商用化に向け設備を納入したという実績に、米国が中国企業による通信設備を避けたことが加わり、有利な地位を獲得できた。同社は米国の主な通信キャリアと次々に5Gネットワーク設備の納品契約を結び、日本でもKDDIに選ばれた。

 しかし、必ずしも楽観視されているわけではない。ドイツは5G通信網構築に関してファーウェイ排除を明示せず、同国で事業を展開する大手通信事業者のスペイン・テレフォニカ(Telefonica)のドイツ部門は同社と5Gネットワーク設備の導入契約を結んだ。これに続いて欧州では次々にファーウェイが契約を勝ち取り、サムスン電子のシェアはこれ以上伸びないのではないかとの見方もある。