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 ERP(統合基幹業務システム)最大手の欧州SAPがデジタル時代のERPに向けて動きを加速させている。その象徴とも言えるのが、SAPが2018年11月に発表した米クアルトリクス(Qualtrics)の買収だ。買収額である80億ドル(約9100億円)は、BI(ビジネスインテリジェンス)ソフトの仏ビジネスオブジェクツ(Business Objects)や、データベースの米サイベース(Sybase)など、SAPが買収してきた多くの企業の中でも最高額になる。

 クアルトリクスは、オンライン調査の実施と分析を支援するサービスを提供するITベンダーだ。顧客や従業員、パートナーなどBtoB分野の調査画面を作成するほか、作成したアンケートを分析する統計解析の機能や、閲覧するダッシュボードの構築機能などを提供している。

クアルトリクスのアンケート結果の分析画面例
クアルトリクスのアンケート結果の分析画面例
(画像提供:クアルトリクス)
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 シンプルに言えばクアルトリクスは、アンケート実施支援サービスと言える。実際に「創業者の父親が大学のマーケティングの教授で、研究用のアンケートデータをもっと簡単に取得したいという要望から生まれた」(クアルトリクス日本法人の熊代悟カントリーマネージャー)という。

 これまでSAPが買収してきた企業は、経費精算サービスの米コンカー(Concur)、調達サービスの米アリバ(Ariba)、人事クラウドサービスの米サクセスファクターズ(Success Factors)などSAPの競合ともなりそうな業務アプリケーションを提供する企業や、ビジネスオブジェクツのように業務アプリケーションの機能を拡張する製品やサービスを持つケースが多かった。業務アプリケーションではないクアルトリクスの買収は異色だ。

 ではなぜSAPはクアルトリクスを買収したのか。その背景にはこれまでSAPが入手できなかった、顧客や従業員の気持ちや考えといったデータを手に入れる狙いがある。「デジタル化が進む今、良い製品やサービスを作って提供するだけでは売れなくなっている。重要なのはその製品やサービスを使って、どのような経験を得られるかだ。クアルトリクスはこれを支援する」と熊代カントリーマネージャーは説明する。

人間の気持ちや考えはERPでは取得できない

 クアルトリクスは自社が提供するサービスのカテゴリーを「エクスペリエンスマネジメント」と名づけている。日本語にすると「経験管理」だ。アンケートを通じて顧客の気持ちや考えといった、人間の経験に関するデータを収集・蓄積し、それを活用するための機能を提供するためだ。

 「経験に関するデータはERPでは取得できない」と米クアルトリクスの創業者であるライアン・スミスCEO(最高経営責任者)は強調する。SAPのERPや業務アプリケーションは売り上げや営業履歴、人事異動などの企業の中で発生する動きのトランザクションデータは取得できる。しかし売り上げや営業履歴のデータでは、顧客が製品を買った時点での「製品そのものや、営業担当者に対する評価」や「異動に対する従業員の満足度」を知ることはできない。

 この問題をアンケートで解決するのがクアルトリクスのサービスだ。「取引先に製品を出荷した」というデータをERPで取得すると、クアルトリクスが取引先にアンケートを送付し製品の満足度や営業担当者への評価などを尋ねる、といった使い方を想定している。

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