PR
全2952文字

 欧州SAPのERP(統合基幹業務システム)パッケージ「SAP ERP(旧製品名R/3)」は、2025年に標準サポートが終了する。日本国内には2000社のSAP ERPユーザーがいるといわれている。今後5年の間にほとんどの企業が基幹系システムの刷新を迫られる「SAPの2025年問題」が間近に迫りつつある。

 「まだ5年ある」とも思えるが、基幹系システムの刷新には少なくても1年以上かかる。SAPのERPを導入できるコンサルタントは数千人単位で不足するといわれており、SAPのERPパッケージを利用している企業では基幹系システムの刷新が重い課題になっている。

 SAPのERPパッケージの利用を継続したいユーザーは、SAP ERPに続く新ERPの「S/4HANA」に移行するしかない。ところがユーザーの中には「S/4HANAにする価値が見いだせない。価値が不明なのに多額の投資はできない」として、S/4HANAへの移行の判断を見送っている企業も多い。

 こうした状況をSAPはどのように見ているのか。またSAPは今、S/4HANAを通じてどのような価値をユーザー企業に提供しようとしているのか。2016年に35歳で欧州SAPのCOO(最高執行責任者)に就任したクリスチャン・クライン氏に聞いた。

S/4HANAの価値はビジネスモデルの変化の支援

 まずクライン氏に尋ねたのはS/4HANAに移行する価値についてだ。SAP ERPのユーザーは、S/4HANAへの移行でどのようなメリットが得られるのだろうか。

 「SAPにとってS/4HANAの価値をユーザー企業に理解してもらうことは非常に重要だ。S/4HANAは企業のバリューチェーン全体の変革を支援する。企業にとっての顧客である消費者や取引先は直接の取引よりも、オンライン販売を好むようになっている。こうした新しいビジネスプロセスの実現を支援するためにS/4HANAはある」

欧州SAPでCOO(最高執行責任者)を努めるクリスチャン・クライン氏
欧州SAPでCOO(最高執行責任者)を努めるクリスチャン・クライン氏
(撮影:陶山 勉、以下同)
[画像のクリックで拡大表示]

 「さらに顧客にとって非常に重要なのは、S/4HANAを利用することで常にリアルタイムのデータを確認できるということだ。予算に対する達成度や、製品の在庫情報、配送情報などを確認できる。リアルタイム情報を把握できることはユーザー企業に大きな競争上の優位をもたらすと考えており、これから機能を追加していきたい領域である」

 クライン氏はS/4HANAはSAP ERPの延長にあるのではなく、「デジタル時代のビジネスモデル変革を支援するものだ」と強調する。しかしSAP ERPからS/4HANAへの移行を決断した企業の中でも、ビジネスモデルの変革までを見据えてS/4HANAを導入した企業は多くない。

 SAP ERPからS/4HANAへの移行は大きく2つある。1つはS/4HANAを新規導入する方法だ。もう1つはSAP ERPのパラメーター設定などを引き継ぐバージョンアップに近い方法だ。一般的に後者のほうがプロジェクト期間が短く費用が抑えられるため、「SAP ERPをS/4HANAにそのまま移行する」方法を推奨しているSAPのパートナー企業も多い。だがクライン氏は「SAPとしては移行ではなくS/4HANAを新規導入する方法を勧める」と話す。

 「SAP ERPからS/4HANAへ移行する際にはSAP ERPから単純に移行するのではなく、新規にERPを導入するアプローチを当社としては勧めている。その際にはビジネスモデルの転換を伴うことが前提になる。ただし仮にビジネスモデルを変えない場合でもあっても、S/4HANAを導入することでAI(人工知能)を利用したビジネスプロセスのより高度な自動化などに着手できる」

この記事は有料会員限定です

「日経コンピュータ」定期購読者もログインしてお読みいただけます。

日経クロステック有料会員になると…

専門雑誌8誌の記事が読み放題
注目テーマのデジタルムックが読める
雑誌PDFを月100pダウンロード

有料会員と登録会員の違い