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宇宙や次世代モビリティーなどを扱う未来技術創造部

経営で重視するテーマやタイムスケジュールなどに応じて強弱を付けながら、社外と協力して取り組んでいるということですね。

梶田 ええ。これまでゼネコンの研究開発といえば、超高層ビルやトンネルといった数年後の大型プロジェクトを念頭に、大学や専門技術を持つ企業の力を借りて、要素技術や施工に必要な機械をつくることでした。今はそれだけでは足りません。

 象徴的な取り組みとしては、19年4月1日、技術本部に「未来技術創造部」と呼ぶ部署を設置しました。扱うテーマはまさに宇宙エレベーターや次世代モビリティーなど。2040年、50年を見据えた動きです。

宇宙エレベーターの建設に必要なカーボンナノチューブの耐久性を調べるために、国際宇宙ステーション「きぼう」の実験スペースを利用して宇宙で曝露(ばくろ)実験を実施した。写真は試験体を受け取る様子。真ん中の人物が大林組の梶田直揮技術本部長(写真:大林組)
宇宙エレベーターの建設に必要なカーボンナノチューブの耐久性を調べるために、国際宇宙ステーション「きぼう」の実験スペースを利用して宇宙で曝露(ばくろ)実験を実施した。写真は試験体を受け取る様子。真ん中の人物が大林組の梶田直揮技術本部長(写真:大林組)
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次世代モビリティーについては、インフラをつくる側の建設会社がもっとコミットすべきだと思っていました。

梶田 例えば、個人のモビリティーと鉄道の乗り継ぎをどうするか、あるいは空飛ぶタクシーと鉄道をどうつなぐかを考えると、駅の構造は現在とは全く違ってくるはずです。今すぐに仕事が出てくるわけではないが、未来のモビリティーに対して、未来の鉄道インフラがどうあるべきか、今から考えていく必要がある。

 そういうことを、自動車メーカーや鉄道会社などと一緒に考えていきたい。実際、次世代移動サービス「MaaS(マース)」については、京浜急行電鉄のパートナーとして議論をしていますし、他にも様々な研究会などに顔を出しています。

 かつては「大事な技術はものになるまで表に出さない」のが当たり前でしたが、今は開発中でも積極的に発表している。こちらから情報を発信すると、それに応じて外から様々なアイデアが集まってきます。未来技術創造部のような部署をつくって情報発信すると、声をかけてもらう機会が増えるのです。

堀井 思えば建設業の基本的な部分は数十年前から変わっていません。使用する材料は相変わらずコンクリートや鉄ですし。もちろん、安全面など格段に良くなった部分はありますが、生産性については製造業に大きく差を付けられました。

 もちろん我々も手をこまぬいていたわけではなく、1980年代、90年代からロボットの開発や工事の自動化に取り組んできましたが、なかなか成果を上げられなかった。建設事業は単品受注生産で、建物や土木構造物のスペック、敷地条件、天候は毎回変わりますから、機械化が難しい面がありました。

 しかし、もはやそのようなことは言っていられない。建設業の就業者は高齢化していて、今後、急激に減っていく恐れがあります。働き方改革を進めるうえでも、生産性の向上は喫緊の課題です。それに、他産業を見ていると、これまで産業内でカイゼンを繰り広げながら、より価値の高い製品やサービスを提供しようとしてきたところに、全く別の分野から新たなプレーヤーが参入してきて、産業構造を一気に変えてしまうような例も出てきている。配車サービス大手の米ウーバーテクノロジーズが、タクシー業界を席巻したように。

梶田 建設業は製造業に比べて、ものづくりをする際の制約条件が多い。それを克服する技術は以前からあったかもしれないが、非常にお金がかかるので割に合わなかったのです。ところが、今はセンサーなどが安価になり、AIのような新しい技術も出てきた。製造業だけでなく、サービス業などでもロボット化が進むでしょうから、我々も負けていられませんよ。

大林組は免震基礎コンクリートの空隙をAIで自動検出する技術を開発した(写真:大林組)
大林組は免震基礎コンクリートの空隙をAIで自動検出する技術を開発した(写真:大林組)
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