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 「制御システムのベンダーとして、AIを制御に取り入れたい」─。ベッコフオートメーション(本社横浜市)代表取締役社長の川野俊充氏は、生産設備でのAI活用に意欲をみせる。

AIをバーチャルセンサーに

 実際、親会社のドイツBeckhoff Automationは、AI活用に向けた動きを活発化させている。具体的には、産業用制御システムの展示会「SPS IPC Drives 2018」(2018年11月27~29日、ドイツ・ニュルンベルク)および欧州最大の産業展示会「Hannover Messe 2019」(2019年4月1~5日、同・ハノーバー)で披露した新しい搬送システム「XPlanar(エックスプラナー)」で、駆動制御に機械学習によるAI推論モデルを活用している(図1)。

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図1 AIを用いてムーバーの動きを制御する「XPlanar」
タイルのコイルに流れる電流から、AIがムーバーの姿勢・位置、速度ベクトルを推論し、それを基に動きを制御する。(a)はHannover Messe 2019でのデモンストレーションの様子。(b)(c)は、それぞれムーバーとタイル。(写真:日経ものづくり)

 XPlanarは、平板形状の固定子(タイル)と可動子(ムーバー)から成る搬送システム。敷き詰めたタイルの上を、磁気浮上したムーバーが自由に移動する。ムーバーをその場で回転させたり傾けたりもできる。同社は、ムーバーを制御する同社のソフトウエアPLC「TwinCAT」用に、AI推論モデルを開発し搭載した。

 XPlanarは、タイルのコイルに流す電流を高速で制御し、ムーバーに搭載した永久磁石との間で浮力や推進力を働かせる。ムーバーを思い通りに動かすには、まずその位置と姿勢をリアルタイムで把握する必要がある。それが分からないと、任意の動きをさせるに当たってどこにどれだけの電流を流すべきが決まらない。

 実は開発当初は、画像やセンサーなどを使ってムーバーの位置や姿勢を把握し、それを基に制御しようとしていたという。しかし、それでは制御が追い付かずリアルタイムに制御できなかった。そこで、ムーバーを動かしながら位置・姿勢を計測するとともに、タイルのコイルの電流や、ムーバーの動く方向や速度などを記録しそれを基に深層学習によって電流と位置・姿勢の相関を学習させたAI推論モデルを構築。同モデルを用いて、ムーバーのリアルタイムでの位置・姿勢把握を実現した。

 同モデルは「コイルの電流からムーバーの位置座標と方向ベクトルを算出する“バーチャルセンサー”のようなもの」(川野氏)だ。もちろん、位置・姿勢の推論精度が悪いと動作制御に影響する。十分学習させ、“センサー”として実用に耐えるAIモデルを搭載しているという。これを応用すれば、「既設のセンサーの計測値から別の物理量を推論できるようになる」(同氏)という。