IT黎明(れいめい)期の1980年代からまだ記憶に新しい2010年代まで、全1176件の「動かないコンピュータ」を振り返る。年代ごとの主な事例からその時代ごとの特徴を再点検してみた。
東京オリンピック開催の翌年となる1965年、三井銀行(現三井住友銀行)が銀行として初めて本店と支店をつなぐオンラインシステムを稼働させた。この時期のシステムと言えば、メインフレームという大型コンピューターによる集中処理を指していた。
70年代からコンピュータの小型化や低価格化が進んだ結果、80年代にOA(オフィス・オートメーション)ブームが起こる。OAとは業務をコンピューターで効率化することで、今で言う働き方改革を指す。表計算ソフトやワープロソフトでシェアを拡大していた米マイクロソフトが日本法人を設立したのもこの時期(1986年)だ。
コピー機やファクシミリと並んでOAブームの中心となったのが小型のオフィスコンピューター、通称「オフコン」だった。
日経コンピュータが創刊した1981年はまさにオフコンの普及期とも言える時期だ。記事にはガソリンスタンドや地方の食品卸など比較的小規模の導入企業が並ぶ。これはオフコンが大企業だけでなく、中小企業への導入も多かった事実を示している。
オフコン巡る裁判も起こる
システム関連のトラブル、すなわち「動かないコンピュータ」の事例が増え出したのもこの時期だ。1981年の創刊号を見ると記事の見出しには「ハードの納入が先行し、ソフト開発が後手後手に回る」という記事が早くも掲載されている。その後の号でも「ついに裁判所に持ち込まれたオフコンをめぐるトラブル」(1981年10月19日第2号)「複雑な業務のシステム開発が不十分で、動かなくなった」(1982年2月8日第8号)とオフコン関連のシステムトラブルが並ぶ。原因はソフトウエアの開発頓挫や、開発後に判明したバグによるダウンだった。
プロジェクトが途中で頓挫した「開発失敗」として掲載された動かないコンピュータ事例を年代別かつ要因別に分類したところ、80年代は「ベンダーが要件を理解できず」という理由が27%と最も多かった。