ビジネスシーンではブレストと同様に数人で行う場合が多いが、もちろん1人で行っても有効である。
また川喜田氏が提唱したオリジナルの手法では、最後に「Step4 文章化」として構造化したデータの文章化を行う。これは必要に応じて行えばよい。KJ法はもともと研究報告書を作る目的のために行われたので、最後に文章にまとめる必要があった。しかしビジネスシーンで発想を生み出す目的で使うなら、必ずしも行う必要はないだろう。
KJ法を情報の整理法と考えている人がいる。だがKJ法の本質は、多くのアイデアや情報を統合して、新たな意味や問題を浮かび上がらせることにある。そのためには、できるだけ多くのカードを作ることや、グループの配置を何度も並べ替えて様々な角度から構造化を試みることなどがポイントとなる。
短い空き時間を発想に有効利用する「マンダラート」
ブレストとKJ法は、いずれも数人が1カ所に集まり比較的短い時間で発想を生み出そうという場合に適している。では、あるテーマについて1人でじっくりと掘り下げて考えたい場合に使える発想法はあるだろうか。その1つが「マンダラート」*1である。
これは、グラフィックデザイナーの今泉浩晃氏が考案した方法で、縦3マス、横3マスからなる合計9マスのシートを何枚も使って発想するものだ。その手順は次のとおりである。
- シートの中央のマスに、キーワードや問題を書き込む
- それに関連のありそうな事柄を周辺の8マスに思うままに書き込む
- 周辺8マスから1つの事柄を選んで、それを新しいキーワードや問題として、別のシートの中央に書く
- ここでまた2を行い、中央のマスから連想されるものを周辺の8マスに書き込む
- 以上を、時間の許す限り繰り返して発想を広げていく
極めて単純な手法だが、自分の“もやもや”とした考えを言葉に置き換え、マンダラ状に配置することによって、発想がどんどん生み出されていくはずだ。次々と新しいシートを使う点も、発想に大きな効果がある。意識が切り替わるとそれが刺激となり、新たな考えが浮かび上がるからだ。
9マスのシートは白紙の手帳に線を引くだけで作れるため、通勤の途中や食後の一服など、ちょっとした時間にできる。この手軽さも大きなメリットである。